血管内大細胞型B細胞リンパ腫、R-CHOP療法では再発多く病変の広がりも高頻度
名古屋大学は2月5日、血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)に対するR-CHOP療法と中枢神経への病変の広がりを予防する治療(高用量メトトレキサート療法と髄腔内抗がん剤注射)を組み合わせた治療法について、臨床試験の長期成績を公表したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院血液内科の島田和之講師、大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学の清井仁教授、医学部附属病院先端医療開発部の鍬塚八千代病院講師、三重大学大学院医学系研究科先進血液腫瘍学の山口素子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「eClinicalMedicine」にオンライン掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
血液がんの一種である悪性リンパ腫の中の一つの病型であるIVLBCLは、まれで、悪性リンパ腫の一般的な特徴であるリンパ節の腫れが認められないため、しばしば診断が難しいことで知られている。この病気の患者の治療は、悪性リンパ腫の中で最も患者数が多いDLBCLの治療と同じR-CHOP療法が行われてきたが、残念ながら再発する患者も多く、特に中枢神経(脳)への病変の広がりを高頻度(20%程度)に認めることが治療上の課題となってきた。また、この病気の患者に対して、臨床試験(あらかじめ決めた治療法に従って治療を受けてもらい、その効果を調べる試験)が行われたことがなく、標準治療は定まっていなかった。
「R-CHOP療法+高用量メトトレキサート療法+髄腔内抗がん剤注射」治療の前方視試験実施
今回の研究では、世界で初めてIVLBCLの患者を対象に、DLBCLの標準治療であるR-CHOP療法に高用量メトトレキサート療法と髄腔内抗がん剤注射を組み合わせる治療の安全性と有効性を調べる前方視試験を行った。未治療で診断時に中枢神経に明らかな病変を認めないIVLBCLの患者を対象に臨床第2相試験を行い、38~78歳までの38人の患者に参加してもらった。2020年の最初の解析では、主要評価項目である2年無増悪生存割合が76%、副次的評価項目である2年全生存割合が92%、2年二次性中枢神経浸潤累積発症割合が3%と良好な治療成績が得られていた。
長期観察結果において、5年無増悪生存割合68%など有効性の持続を確認
今回、長期間の観察結果が得られ、5年無増悪生存割合が68%、5年全生存割合が78%、5年二次性中枢神経浸潤累積発症割合が3%と、有効性が持続的であることが確認された。最初の解析以降認められた副作用(有害事象)も許容範囲内だった。
今後のIVLBCL治療法の評価基準となり得る成果、さらなる成績向上を図ることが重要
今回の研究成果により、未治療のIVLBCLに対する今回の研究の治療法の長期的な有効性と安全性が確認された。最初の解析結果が公表されて以降、今回の研究の治療法が実際の診療で広く行われている。「悪性リンパ腫の治療は日進月歩であり、今回の研究の治療成績を、今後のIVLBCLに対する治療法の評価基準としながら、IVLBCLに対する更なる治療成績の向上を図っていくことが重要であると考えられる」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・名古屋大学 研究成果発信サイト