客観的な心の評価方法が望まれてきた
金沢大学は2月3日、心拍変動解析を用いた精神的疲労の解析に成功したと発表した。この研究は、同大保健管理センターの吉川弘明教授、足立由美教授ら、京セラ株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS Mental Health」オンライン版に掲載されている。

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現在、個人の心理状態は、さまざまな心理検査によって評価されている。心理検査は、個人の心理的な特性や状態を理解・評価するための重要な方法である一方、個人自身が回答に応じるため主観的な要素も含まれる評価方法である。しかし、心の状態は自分で気がつかないことがあり、客観的に心の評価ができる方法が望まれてきた。
心拍変動解析で精神的疲労を正しく評価できると実証、心理検査と併用で多面的な評価も可能
今回は、心拍の揺らぎを解析する心拍変動解析(HRV)を利用し、精神的疲労が正しく調べられるかを検証した。同研究では、着装したまま日常生活を送ることが可能な、チェストストラップ型のウェアラブル心電計を用いた。対照として心理テストのProfile of Mood States 2nd Edition(POMS2日本語版)とVisual Analogue Scale(VAS法)を用いた。ランダム化比較試験の結果、HRVは精神的疲労を高い精度で検出し、その精度はVAS法と同レベルであった。
また、主成分分析の結果からHRVが捉えている心の状態は、VAS法が評価しているものとは性質が違うことも判明。両者の併用により、多面的な心の状態を捉えられることが明らかになった。
災害時のメンタルヘルスケアへの応用などに期待
今回の研究は、認知科学者のフランシスコ・ヴァレラが1991年に提唱した概念「身体化された心(The Embodied Mind)」を、科学的に検証する成果である。「今後、令和6年能登半島地震や令和6年奥能登豪雨による心の不調を抱える方へのサポートなど、福祉、医療、労働、教育等の人が関わる全ての領域で社会実装されていくことが期待される」と、研究グループは述べている。
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