GLP-1受容体作動薬のエキセナチド、パーキンソン病の進行を抑制できず
オゼンピックやウゴービなどのGLP-1受容体作動薬によりパーキンソン病の進行を遅らせることができる可能性が期待されていたが、残念な結果が報告された。GLP-1受容体作動薬の一種であるバイエッタ(一般名エキセナチド)に関する第3相臨床試験で、同薬がパーキンソン病に対する疾患修飾効果を持つことを裏付けるエビデンスは確認できなかったことが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のThomas Foltynie氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に2月4日掲載された。

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この臨床試験は、英国の6カ所の研究病院で、試験登録前にドパミン作動薬による治療を4週間以上受けていた25〜80歳のパーキンソン病患者194人(平均年齢60.7歳、男性71%)を対象に実施された。対象者は、96週間にわたり徐放性注射剤のエキセナチド2mgを1週間に1回投与する群と、プラセボを投与する群に97人ずつランダムに割り付けられた。主要評価項目は、96週間後にドパミン作動薬を服用していない状態のときにUPDRS統一パーキンソン病評価スケールパート3(MDS-UPDRS Ⅲ)で評価した運動機能のスコアとした。
その結果、介入開始から96週間後のMDS-UPDRS Ⅲのスコアは、エキセナチド群で平均5.7点、プラセボ群で平均4.5点上昇したことが示された。このスコアの上昇は症状の悪化を意味する。副次評価項目とした認知機能や抑うつ症状、ジスキネジア評価尺度での評価結果、生活の質(QOL)などについても両群間で有意な差は認められなかった。さらに、試験開始時と96週間後にドパミントランスポーターSPECT(単一光子放射断層撮影)検査を受けた73人(エキセナチド群36人、プラセボ群37人)を対象にした解析でも、パーキンソン病の病態進行の指標とされる線条体結合比(striatal binding ratio:SBR)の変化について、両群間で有意な差は認められなかった。
Foltynie氏は、「非常に残念な結果だ。われわれは、試験が順調に進み、良い結果が得られると期待していた」とThe New York Times紙に語っている。GLP-1受容体作動薬が糖尿病や肥満症の治療に革命をもたらして以来、研究者らは、同薬剤がニューロンを保護してパーキンソン病の進行を遅らせるのではないかと期待を抱いていた。実際、同紙は、初期の動物実験や小規模な臨床試験では潜在的な利点が示唆されていたと報じている。
米フロリダ大学のパーキンソン病専門家でパーキンソン病財団の全国医療顧問でもあるMichael S. Okun氏は、「この結果には厳しい現実を突きつけられた。非常によく設計された臨床試験だったが、期待した結果は得られなかった」と失意を表す。
パーキンソン病の専門家は、GLP-1受容体作動薬が脳内でどのように作用するのかを解明しなければ、将来の研究も同様に期待外れの結果になる可能性があると警告している。米アラバマ大学バーミンガム校のDavid Standaert氏は、「GLP-1受容体作動薬により脳内でどの生化学的プロセスを変えようとしているのか、そもそもGLP-1受容体作動薬の作用機序はどうなっているのかなど、ターゲットが明確にならない限り、私はこのような研究を再び行うつもりはない」と同紙に語っている。

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