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多汗症、医療・気象のビッグデータを用いた調査から流行開始期を予測-科研製薬ほか

読了時間:約 2分22秒
2025年02月13日 AM09:30

発症・受診状況と気象の関連を検証したエビデンスはほとんどない

科研製薬株式会社は2月4日、診療報酬明細書(以下「レセプトデータ」)と各種気象情報を用いた多汗症患者の受診状況に関する調査を実施し、気象と多汗症の受診状況に一定の相関関係があることを見出したと発表した。この研究は、同社、一般財団法人日本気象協会、株式会社JMDC、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野室田浩之教授、同大病院早稲田朋香医員らの研究グループによるもの。研究成果は「皮膚の科学」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

原発性局所多汗症は、手のひら、足のうら、腋窩、頭部顔面の限局した部位から日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗を認める疾患である。日本における2013年の調査によれば、原発性局所多汗症の有病率は12.8%と報告されているが、医療機関への受診率は6.3%と低いことが明らかとなっている。また、気象情報の各種項目、およびそれらの変化によって、多汗症の発症や受診状況に実際にどのような影響があるのかを検証したエビデンスはほとんどない。

そこで、「腋窩多汗症で悩む方が自分らしく安心して生活できる社会をつくる」、「気象のチカラで人や社会の価値を創造する」、「データとICTの力で、持続可能なヘルスケアシステムを実現する」JMDCの3者が強みを持ち寄り、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学が有する多汗症への専門性に基づいて分析系を設計し解釈を最適化しながら、日本において、これまでにない新たなエビデンスの創出に取り組んだ。

約7年分の医療データと気圧・気温など多様な気象データを照らし合わせて分析

今回の調査は、ビッグデータを活用し、2015年1月から2022年9月までのレセプト上に「発汗過多」等が観察された100万人超(延べ患者数)の医療データに対して、同期間に蓄積した膨大かつ多様な気象データの各項目、海面更正気圧(平均・最低)、雨量(合計)、(平均・最高・最低)、相対湿度(平均・最小)、風速(平均・最大)、日照時間(合計)、および体感温度などを照らし合わせて分析を実施した。

流行開始期はおよそ南から北の順で5月~7月まで分布

分析の結果、多汗症と気象の関係性として以下が示された。まず、多汗症患者数は各年次の夏季(平均第31週目)をピークとした周期的な受診状況となっていること。次に、多汗症患者数との相関性分析から、「最低気温」および「体感温度」の相関性(単変量解析による決定係数)が高い傾向にあることがわかった。さらに、気象データを用いて多汗症流行開始期を推定する試みの結果、流行開始期はおよそ南から北の順で5月~7月まで分布することもわかった。

流行開始期の予測で適切な受診・治療につながることに期待

今回の取り組みを通じて「ビッグデータを効果的に用いることで日頃なんとなくイメージしていた多汗症の受診状況に関する仮説を科学的・疫学的に可視化すること」の重要性を表現できたものと考えられる。データや手法のリミテーションを鑑みてさらなる探索や追究を進める必要がある。実態の把握とあわせて、調査で実施した多汗症流行開始期の予測のような取り組みは、学問的な価値にとどまらず、社会実装による患者の疾患リテラシー向上(受診の動機や気づき)につながる価値を秘めており、より確からしく、より日常的な情報源になるよう考えていく必要がある。

長崎大学の室田浩之教授は、「腋窩多汗症を含む多汗症は患者のQOLに影響する疾患でありながら、適切な受診および治療に至らない状況が相応存在する。日常の生活で見聞きする気象という情報源を通じて多汗症および、その治療起点を認知できれば汗に悩むより多くの患者の早めの受診行動につながり、QOL低下を未然に防げるであろう」と述べている。

 

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