重度の感染症による入院歴は心不全リスクを高める
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの感染症による入院は、心臓病リスクを高める可能性があるようだ。重度の感染症で入院した経験のある人が後年に心不全(HF)を発症するリスクは、入院歴がない人と比べて2倍以上高いことが新たな研究で示された。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて米メイヨー・クリニックのRyan Demmer氏らが実施したこの研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association」に1月30日掲載された。

画像提供HealthDay
この研究では、1987年から2018年まで最大31年間にわたる追跡調査を受けたARIC研究参加者のデータを分析して、感染症関連の入院(infection-related hospitalization;IRH)とHFとの関係を評価した。ARIC研究は、アテローム性動脈硬化リスクに関する集団ベースの前向き研究で、1987〜1989年に45〜64歳の成人を登録して開始された。本研究では、研究開始時にHFを有していた人などを除外した1万4,468人(試験開始時の平均年齢54歳、女性55%)が対象とされた。対象者は、2012年までは毎年、それ以降は2年に1回のペースで追跡調査を受けていた。左室駆出率(LVEF)が得られた患者については、LVEFが正常範囲(50%以上)に保たれたHF(HFpEF)患者と、LVEFが低下(50%未満)したHF(HFrEF)患者に2分して検討した。
追跡期間中(中央値27年)に、6,673人が1回以上のIRHを経験し、3,565人が新たにHFを発症していた。IRH歴を持たない人と比べて、IRH歴を持つ人のHF発症のハザード比(HR)は2.35(95%信頼区間2.19〜2.52)であった。この関係は、呼吸器感染症や泌尿器感染症、血流感染症など、感染症の種類に関わりなく認められた。さらに、HFのタイプが判明した7,669人を対象にした解析でも、IRHはHFrEFおよびHFpEFと有意な関連を示した(HFrEF:HR 1.77〔95%信頼区間1.35〜2.32〕、HFpEF:同2.97〔同2.36〜3.75〕)。
研究グループは、「本研究の対象者の半数近くがIRHを経験していた。このことは、感染症が米国人の心臓の健康に極めて大きな影響を与えていることを示唆している」と述べている。
Demmer氏は、「本研究は、重度の感染症とHFの因果関係を証明したわけではないが、人々は変わらず、重度の感染症を予防するための常識的な対策を取るべきことを示唆している」との見方を示す。同氏は、「特に、心臓病リスクが高く、重度の感染症を患っている人は、かかりつけ医に相談し、心臓の健康を守るための対策を講じるべきだ」と付け加えている。
一方、米国立心肺血液研究所(NHLBI)のSean Coady氏は、「これは、注目に値する知見だ。感染症罹患歴と心筋梗塞との関連についてのエビデンスは豊富にあるが、本研究は、心筋梗塞ではなくHFに焦点を当てている点が異なる。米国でのHF患者数は推定600万人に上るが、HFについての研究はあまり進んでいない」と話している。

Copyright c 2025 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock