CKDの診断における尿アルブミン定量測定、日本の保険診療範囲は限定的
横浜市立大学は2月3日、慢性腎臓病(CKD)の診断において、腎障害の指標である尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)は糖尿病の合併有無にかかわらず、他の指標と比べ費用対効果が高いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大附属市民総合医療センターの田村功一病院長(医学部循環器・腎臓・高血圧内科学主任教授)、NPO法人日本腎臓病協会(JKA)の柏原直樹理事長、バイエル薬品株式会社ほかの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Diabetes Investigation」および「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載されている。

日本の保険診療では、UACRを算出するために必要な尿アルブミン定量測定の保険請求が、糖尿病または糖尿病性早期腎症で微量アルブミン尿を疑う患者(糖尿病性腎症第1期または第2期)に対して行った場合、3か月に1回と限られている。一方、諸外国ではCKD全般で尿アルブミン定量測定が行われている。CKDの定義や重症度分類も、国際的には尿アルブミン定量測定を基に行われるが、日本では尿タンパク排泄量で代用せざるを得ない状況となっている。
2型糖尿病・非糖尿病患者対象、UACRの費用対効果をUPCRおよび尿検査なしと比較検討
今回、こうした実態を踏まえ腎臓病対策の普及啓発に関する包括連携協定の一環として、CKDの診断にUACRがより適切に使用できるようにするため、2型糖尿病患者、非糖尿病患者それぞれを対象に、UACRの医療経済評価に関する2つの研究(研究1、2)を行った。
各患者集団において、医療経済モデルを用いてUACRの費用対効果を、尿タンパク/クレアチニン比(UPCR)および尿検査をしない場合と比較検討した。また、今回の産学連携国際共同研究において、治療効果の指標にはQOL値の一つの指標であるQALYを使用した。
2型糖尿病患者におけるUACRの早期診断・介入、尿検査なしと比較し費用対効果高い
研究1では、2型糖尿病患者におけるUACRの医療経済評価を行った。その結果、2型糖尿病患者のUACRを定期的にチェックし、CKD患者の早期診断・治療介入を行うことは、尿検査をしない場合と比較して、費用対効果が高いことが示された。費用対効果の指標である増分費用効果比(ICER)は265万2,693円/質調整生存年(QALY)だった。
非糖尿病患者におけるUACRの早期診断・介入、尿検査なし/UPCRと比較し費用対効果高い
また、研究2では、非糖尿病患者におけるUACRの医療経済評価を行った。その結果、非糖尿病患者のUACRを定期的にチェックし、CKD患者の早期診断・治療介入を行うことは、尿検査をしない場合またはUPCRのチェックと比較して、費用対効果が高いことが示された。ICERは196万6,433円/QALYだった。
ICERは、医薬品や検査などの新たな医療技術により追加でかかる費用が、追加で得られる効果に見合っているかどうかを評価する指標である。費用の増分を分子、治療効果の向上量を分母として計算し、ICERの値が小さいほど費用対効果が高いとみなされる。日本の公的医療保険制度では、保険償還価格を設定する際のICER標準基準額が500万円/QALY以下に設定されていることから、今回の研究(研究1、2)の結果は日本の医療環境下において費用対効果が高いと判断することができる。
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