PD患者Camptocormiaあり/なし+健常高齢者で、歩行不安定性を検証
畿央大学は1月5日、顕著な前屈姿勢(camptocormia)を示すパーキンソン病パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)患者は、歩行中の垂直方向の不安定性が高く、転倒リスクが高いこと、また重心位置を後方に位置させ、側方への重心移動を増加させる代償戦略をとることを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院博士後期課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Movement Disorders」に掲載されている。
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PD患者は、Camptocormiaを示すことがある。しかし、そのような前屈姿勢が歩行不安定性にどのような影響を与えるのか、またそれをどのように代償しているのかについて客観的に十分明らかにされていなかった。
そこで今回の研究ではCamptocormiaを示すPD患者10人、CamptocormiaがないPD患者30人および健常高齢者27人を対象に、三次元動作解析を用いて歩行不安定性の検証を行った。対象者には快適歩行速度で5mの歩行路を歩行してもらい、歩行安定性指標と時空間歩行指標、運動学的指標を計測した。実験環境における歩行安定性と代償戦略は、個人の特性や心理状況によって異なる可能性がある。したがって、健常高齢者群と比較して顕著に異なる歩行不安定性の傾向を有する患者を確認したうえで、その者を除外し、3群間比較を実施した。また、PD患者全体で前屈角度と各歩行指標との関連を検討した。
Camptocormiaあり、垂直方向の不安定性/転倒リスク「高」
研究の結果、CamptocormiaがあるPD患者のうち1人は、顕著な前方への歩行不安定性を示した。異質であったこの1例を除き、解析を行った結果、CamptocormiaがあるPD患者はCamptocormiaがないPD患者と比較して、COMが低位であり、垂直方向の歩行不安定性が高いことが示された。また、CamptocormiaがあるPD患者は、歩行中のCOMを後方に位置させ、矢状面上の下肢関節運動範囲が減少し、COM側方速度、骨盤側方傾斜の運動範囲、歩隔が増加することが示された。
顕著な前方への歩行不安定性を示した1人は、CamptocormiaがあるPD患者群の特徴であったCOM後位や矢状面上の関節運動範囲の減少、歩隔の拡大を認めなかった。また、この症例は頻回な前方への転倒歴を認め、転倒恐怖心が乏しく、歩行時の安全性を優先しない発言や行動を認めた。
これらの結果は、Camptocormiaを示すPD患者はCamptocormiaがないPD患者と比較して、垂直方向の歩行不安定性が高く、前屈角度の増加に伴い転倒リスクが高まることを示している。
Camptocormiaありは後ろ重心など代償戦略「強」も判明、リハビリ介入の知見として期待
一方で、Camptocormiaを示すPD患者は、前方への歩行不安定性が生じないように後方重心姿勢をとり、矢状面上での関節運動を減少させ、側方の関節運動を増加させることで、体幹屈曲の慣性モーメントを減少させる代償戦略をとっていると考えられる。
今回の研究成果により、顕著な前屈姿勢を示すパーキンソン病患者は、垂直方向の歩行不安定性による転倒リスク増加と歩行不安定性の代償戦略について、初めて客観的に解明した。また、一部の前屈姿勢を示す患者は、実験環境下でも顕著な前方への歩行不安定性を示すことが確認された。同研究の知見は、前屈姿勢を示すパーキンソン病患者の歩行安定性を最適化するためのリハビリテーションにおける介入戦略を検討する上で有益な知見となることが期待される。今後は、実際の日常生活場面の歩行不安定性の検証や個人の代償戦略の適用に及ぼす要因についても検証する予定だ、と研究グループは述べている。
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