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血液透析がん患者の予後、一般がん患者と同等である可能性-京大ほか

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2025年01月14日 AM09:10

血液透析患者のがん、診断・治療・予後についての知見乏しい

京都大学は12月27日、国内のがん拠点病院20施設との多施設共同研究を実施し、502人の血液透析がん患者の臨床データについて、がんの診断・治療・長期予後について解析したと発表した。この研究は、同大医学研究科腎臓内科の柳田素子教授(兼:高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)主任研究者)、ASHBiの鳥生直哉特定研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Kidney Journal」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

血液透析患者は一般集団と比較して、がんの発症率および死亡率が高いことが報告されている。日本では、がんは血液透析患者における死因の第3位であり、全死因に占める割合は徐々に増加している。そのため、血液透析患者の予後を改善するためには、がんの管理がますます重要になっている。

しかし、血液透析患者におけるがんの診断・治療・予後についての知見は乏しく、フランスで行われたCANcer and DialYsis(CANDY)研究は、主に化学療法の種類や用量調整に焦点を当てた血液透析患者のがん管理に関して報告しているが、手術治療については検討されていない。透析がん患者に対する手術療法の疫学研究は、術後合併症についての報告がほとんどであり、長期的な術後転機を比較するデータは乏しく、血液透析がん患者の予後を改善するかどうかは不明のままだった。また、血液透析がん患者の死亡率に影響を与える要因についても明確ではなかった。そこで研究グループは、日本における血液透析患者のがんに関する全国的なコホート研究を実施し、血液透析患者におけるがんの診断・治療・長期予後について明らかにすることを目指した。

がんと診断された透析患者502人対象、74%が手術療法実施

2010年から2012年に日本国内のがん拠点病院20施設で、腎・大腸・胃・肺・肝臓・膀胱・膵臓・乳房を原発巣とするがんと診断された透析患者502人を対象として解析した。

血液透析開始からがんと診断されるまでの透析期間の中央値は74か月であり、腎がんと乳がんはそれぞれ140か月、156か月と長期だった。一方で、・肺がん・・膵臓がんの診断までの透析期間の中央値は31~64か月だった。370例(74%)は手術療法を実施され(手術実施群)、132例(26%)は手術療法以外の治療が選択された(手術非実施群)。手術非実施群の44例(33%)に化学療法が実施され、42例(32%)はベストサポーティブケアが選択された。502例中287例(57%)が、がん診断時無症状であり、そのうち217例(76%)は透析施設における定期検査で発見された。3年生存率は手術実施群では83%、手術非実施群では32%だった。

手術実施/非実施における3年生存率・予後不良因子など判明

手術実施群のうち、・乳がんの患者の3年生存率は93%、95%と良好だったが、膵臓がんは41%と不良だった。また、手術非実施群では、肝臓がんの3年生存率は64%と良好だったが、大腸がん・胃がん・膵臓がんは0〜12%と不良だった。手術実施群の死亡原因は感染症や心不全などがん非関連の死因が80%を占めていたが、手術非実施群では70%が、がん関連だった。多変量解析では、手術実施群の予後不良因子は膵臓がん(ハザード比3.61)と貧血(ハザード比1.90)だった。また、手術非実施群の予後不良因子は膵臓がん(ハザード比8.01)だった。さらにがん診療連携拠点病院院内がん登録に登録されている一般がん患者と手術実施率・生存率を比較したところ、血液透析患者と一般がん患者で手術実施率および3年生存率は同等だった。

手術実施群の3年生存率は83%、透析がん患者の生存期間は相対的に良好

今回の研究における透析がん患者の生存期間は先行研究に対して相対的に良好だった。特に、手術実施群では、生存期間が長く(3年生存率83%)、死亡原因は、がん関連よりも非がん関連死亡が多い(80%)ことが明らかとなった。以上の結果は、透析がん患者を手術可能な状態で発見し、適切な透析・合併症管理を継続することの重要性を示唆している。

今回、血液透析患者のがんの診断・治療・長期予後について解析し、特に手術療法について検討を行った。「近年、免疫療法や補助療法(アジュバント療法)、術前補助療法(ネオアジュバント療法)などのがんの新しい治療方法が進展しており、血液透析がん患者において、これらの治療法が長期予後に及ぼす影響については、今後明らかにするべき課題であると考えられる」と、研究グループは述べている。

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