後遺症患者の筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、病態解明や治療法開発が待たれる
岡山大学は12月26日、オミクロン株流行期に感染したコロナ後遺症患者における筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)への移行頻度は3.3%と低い一方で、ブレインフォグ症状の割合が81.3%と高く、後遺症に関連したME/CFSの症候は感染時期により異なることが示されたと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科の森田悟大学院生と、同大学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学の大塚文男教授らのグループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。
コロナ後遺症の一部は、日常生活がままならないほど重度な倦怠感が長期間持続するME/CFSに移行するとも言われている。ME/CFSの症状は倦怠感という自覚症状であるため、周囲から理解されにくい病態と言える。ME/CFSは身体的問題だけでなく社会的にも大きな課題を有する複雑な疾患であり、病態の解明や治療法の開発が待たれている。
岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来では、2021年2月15日の開設からこれまで、1,000人を超える新型コロナ後遺症患者を診療してきた。
岡山大のコロナ後遺症患者748人のうち、全期間におけるME/CFSの割合は8.4%
研究グループは、2021年2月15日~2023年7月27日までの期間に同院のコロナ・アフターケア外来を受診したコロナ後遺症患者748人において、コロナ後遺症に関連するME/CFSの感染時期ごとの臨床的特徴について検討した(感染して間もない患者や10歳未満の患者を除外)。ME/CFSの臨床像の評価を客観化するため、3つの異なる代表的な診断基準(Fukuda・CCC・IOM)を全て満たした患者をME/CFSと定義して解析を行った。
結果として、全期間におけるME/CFSの割合は8.4%であり、新型コロナに感染した急性期の重症度や喫煙・飲酒の習慣、ワクチン未接種がME/CFSへの移行に関与することが示されたが、変異株の期間別ではワクチン接種率に差はなかった。
ME/CFS移行率、デルタ流行前23.9%、デルタ流行期13.7%、オミクロン流行期3.3%
期間別のME/CFSの割合は、デルタ株流行前(P期):23.9%、デルタ株流行期(D期):13.7%、オミクロン株流行期(O期):3.3%だった。
ME/CFSでは流行期によらず、倦怠感と頭痛を訴える頻度が高いことが判明した。また、O期のME/CFSでは集中力低下を訴える割合が他の変異株期よりも高く、ブレインフォグ(頭の中に霧がかかったように集中力や記憶力が低下する症状)を訴える患者の割合が、変異株の変化とともに増加していること(P期:22.2%、D期:47.4%、O期:81.3%)が明らかになった。
新型コロナ後遺症のみならず、ME/CFSの病態解明への寄与にも期待
新型コロナ感染症の5類移行後1年半が経過し感染者の数は減少しているが、感染後も数か月持続する倦怠感や、頭痛、睡眠障害を訴える後遺症は一定の割合で発生している。コロナ後遺症の発症機序や特効薬についてはいまだ研究途上だが、本研究が後遺症のみならず、ME/CFSの病態解明にも寄与できることを期待している、と研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース