IIPの予後予測に有用なHALスコア、線維化の進行予測が可能かは不明
浜松医科大学は12月26日、静岡県の特発性間質性肺炎(IIP)患者の144人の前向き観察研究のデータを追加解析し、IIPの中でも特発性肺線維症(IPF)以外のIIP(non-IPF)において、「HALスコア」が進行性の線維化と関連することがわかったと発表した。この研究は、同大医学部附属病院腫瘍センター柄山正人講師、内科学第二講座中安弘征医師(大学院生)、須田隆文教授(研究当時、現:理事・副学長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Respiratory Investigation」に掲載されている。
IIPは、進行性の肺線維化を来す原因不明の難治性疾患で、治療反応性や進行速度の異なるさまざまなフェノタイプで構成されており、生命予後は患者ごとに大きく異なる。このためIIP患者の診療においては、患者の疾患進行リスクや死亡リスクに応じたマネージメントが求められる。特に、線維化の進行をきたす患者には、抗線維化薬が適応となるため、その予測は臨床的に重要だ。
研究グループは、2023年にIIPの急性増悪(=急激に悪化する重篤な病態)を予測するモデルとして、胸部CTでの蜂巣肺の所見-2-(H)、年齢>75歳(A)、血液検査でのLDH高値(L)という3つのシンプルな要素で構成される「HALスコア」を開発した。この研究の中で、HALスコアは急性増悪だけではなく、予後の予測にも有用であることがわかっていた。一方、HALスコアが線維化の進行を予測できるかどうかは不明だった。
IPF以外のIIPでHALスコアと線維化の進行に有意な関連
研究グループは今回、静岡県のIIP患者の144人の前向き観察研究のデータを追加解析し、HALスコアと線維化の進行が関連するかどうかを調べた。2014年9月~2020年12月に静岡県の15の研究協力施設で行われたIIP患者前向き観察研究データから、抗線維化薬の投与を受けていない144人のデータを抽出し、HALスコアと線維化の進行の関連を調べた。
研究の観察期間中に22.3%の患者に線維化の進行が見られ、HALスコアと線維化の進行は有意な関連を示した(スコア0=12.5%、スコア1=25.9%、スコア≧2=33.3%、p=0.032)。サブグループ解析を行うと、IIPのサブタイプのうち、IPFではHALスコアとの関連が見られなかったが、IPF以外のIIP患者(non-IPF)では有意な関連が見られた(p=0.021)。
抗線維化薬による適切なタイミングでの治療介入に期待
今後のIIPの診療において、HALスコアを用いてnon-IPF患者の線維化の進行リスクを予測し、ハイリスク患者には注意深くモニタリングを行うことで、抗線維化薬の適応時期を見逃すことなく適切に治療介入を行うことが期待される。「線維化の進行の予測に特化した新たなスコアモデルの開発への展開も期待される」と、研究グループは述べている。
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・浜松医科大学 研究成果プレスリリース