余暇活動と死亡・要介護リスクの直接的検討研究はなかった
東京科学大学は12月25日、余暇活動を開始した高齢者が活動を始めなかった高齢者と比べて、その後6年間における死亡率および要介護リスクが有意に低下していることを示したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野の増子紗代大学院生、相田潤教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Geriatrics Society」にオンライン掲載されている。
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余暇活動は人生を豊かにし、高齢者に多くの健康上の恩恵をもたらす。これまでの研究では、余暇活動への参加が死亡や要介護リスクの低下と関連していることが報告されている。特に、余暇活動の開始・継続・停止が死亡や要介護リスクに与える影響を推計することは、健康寿命を伸ばすための政策立案などに役立つと考えられる。しかし、余暇活動の有無の変化が死亡や要介護リスクにどのような影響を及ぼすかについて直接的に検討した研究はこれまで行われていなかった。
日本人高齢者3.8万人対象、余暇活動有無の経時的変化と死亡・要介護リスクの関連を分析
そこで今回の研究では、日本人の高齢者を対象に、余暇活動の有無の経時的な変化が死亡および要介護リスクにどのように関連するかを明らかにすることを目的とした。同研究では、65歳以上の自立した高齢者を対象とした日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを使用。2010年のベースライン調査および2013年のフォローアップ調査の両方に回答した3万8,125人(男性1万7,881人、女性2万244人、平均年齢72.8±5.5歳)のデータを解析対象とし、さらに2013年調査以降の6年間の追跡データを分析に活用した。
余暇活動「開始」で、その後6年間の死亡・要介護リスク低
研究の結果、2010年と2013年の両方で余暇活動をしていなかった人と、2013年に余暇活動を開始した人を比較すると、2020年までの死亡率はそれぞれ28.6%と21.1%、要介護2以上の発症率は24.6%と18.1%。余暇活動を開始した人の方が、死亡率および要介護リスクのいずれも低い傾向が見られた。共変量で調整した結果、2013年に余暇活動を開始した人は、活動を開始しなかった人と比較して、その後6年間の死亡のハザード比が0.82(95% CI, 0.69–0.98)、要介護リスクが0.89(95% CI, 0.79–1.01)と低下していた。
以上の疫学研究の結果から、余暇活動を開始することで、活動を開始しなかった場合と比較して、関連する変数を調整した後でもその後6年間の死亡および要介護リスクが低くなることが明らかになった。余暇活動の有無の変化と死亡・要介護リスクとの関連を調査し、活動の開始がリスクの低下に関連することを世界で初めて示した。
現在余暇活動なしも、将来的に「開始」で死亡・要介護リスク減の可能性
今回の研究成果は、余暇活動を開始することが、現在余暇活動をしていない高齢者の死亡および要介護リスクの低下につながる可能性があることを、世界で初めて示したものである。同研究の結果から、たとえ現在余暇活動を行っていなくても、将来的に余暇活動を始めることが死亡および要介護リスクの減少に寄与する可能性が明らかになった。これにより、高齢者の健康寿命を延ばすための具体的な介入策として、余暇活動の推奨が有効であることが示唆される、と研究グループは述べている。
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