家庭脈拍と死亡リスクとの関連は不明だった
帝京大学は12月24日、高血圧患者3,022人を7年3か月間追跡したデータを用いて、家庭脈拍が速いほど死亡リスクが増すことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部公衆衛生学講座の大久保孝義主任教授と帝京大学医学部附属溝口病院第4内科の木村隆大医員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Heart Association」にオンライン掲載されている。
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診察室で測定された脈拍は、死亡リスクや脳心血管病発症リスクと関連することがわかっている。そのため、高血圧学会のガイドラインでも脈拍測定の重要性が指摘されている。しかし、診察室の外での脈拍値、特に家庭で測定した脈拍値と死亡リスクとの関連は、これまでほとんど報告されていなかった。脈拍は血圧以上に心理的緊張に左右され、診察室では普段よりも速い脈拍が記録されることがある。
そこで研究グループは、普段通りのリラックスした状態で測れる家庭脈拍が、死亡リスクをより反映するのではないかと考え、研究を行った。
高血圧患者3,022人に家庭脈拍の自己測定を依頼、7年3か月生存状況を追跡
今回の研究は、日本全国457人の医師が参加して家庭血圧の適正な降圧目標値を検証した大規模ランダム化比較試験「HOMED-BP研究」のサブ解析として実施した。心房細動や脳心血管病の既往歴のある人を除いた高血圧患者3,022人を対象として、家庭血圧計で家庭での脈拍を自己測定し、その後7年3か月間生存状況を追跡した。家庭脈拍は高血圧治療開始前の5日間と、高血圧治療中の5日間の2つのポイントで測定した。
家庭脈拍の速さで患者を5つのグループに分け、最も遅い家庭脈拍のグループを基準とし、それぞれのグループの死亡リスクを、生存時間のデータを扱う研究で使用される「Cox比例ハザードモデル」で算出した。
家庭脈拍が1分あたり66拍以上の患者は死亡リスク2倍以上、速いほどリスク上昇
その結果、家庭脈拍が速いグループでは、死亡リスクが統計学的に有意に高値であることが判明。具体的には、家庭脈拍が1分あたり66拍以上の患者は、65拍/分以下の患者に比べ、死亡リスクが2倍以上になることが確認された。家庭脈拍を連続変数として分析しても、家庭脈拍が速いほど死亡リスクが上昇することがわかった。さらに家庭脈拍と診察室脈拍を、死亡リスクとの関連の強さで統計学的に比較したところ、家庭脈拍の方が診察室脈拍よりも尤度比検定で統計学的に有意に関連が強固であることが判明した。
家庭脈拍に留意することによる診療の質・生活習慣の是正に期待
今回の研究により、家庭脈拍が死亡リスクを予測する有用な指標であり、臨床において家庭脈拍に注意することの重要性が示された。
研究グループは「高血圧患者が、高い脈拍と関連するさまざまな疾患(貧血、呼吸器疾患、がんなど)を併発していないか否か気を配る糸口となり、また、高い脈拍と関連する改善可能な生活習慣(喫煙、座りがちな生活など)の是正、指導の一助となることが期待される」と、述べている。
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