RFAと比較し革新的で有用とされるMWA、ランダム化比較試験での検証は未実施
東京医科大学は12月23日、肝細胞がん治療においてマイクロ波焼灼療法(MWA)と従来のラジオ波焼灼療法(RFA)の有効性を比較するランダム化比較試験(RCT)を実施しMWAの有効性を実証したと発表した。この研究は、同大消化器内科学分野の糸井隆夫主任教授、杉本勝俊准教授、岩手医科大学内科学講座消化器内科分野の黒田英克特任教授、聖隷浜松病院消化器内科・肝腫瘍科の室久剛肝腫瘍科部長らのほか、東京医科大学病院、横浜市立大学附属病院、岩手医科大学附属病院、聖隷浜松病院、東邦大学医療センター大橋病院の5施設による共同研究グループによるもの。研究成果は、「JHEP reports」に掲載されている。
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肝細胞がんの標準的な治療法として、3cm未満で3個以内の腫瘍に対してはRFAが用いられている。その一方でMWA、特にEmprint Ablation Systemは、短時間で球状かつ広範囲の焼灼を実現することが可能であり、RFAと比較して革新的で有用な手法と考えられている。しかし、MWAの有用性については、いまだRCTでの十分な検証が行われていなかった。そこで今回の研究では、4cm以下の肝細胞がんにおいて、MWA(試験治療)とRFA(標準治療)の有効性をRCTで評価した。
2年局所再発率、RFA群30.4%に対しMWA群16.4%で有意に良好
2018年7月から2021年12月までに、240人の肝細胞がん患者が登録され、最終的に、119人の患者(130結節)がMWAで、117人の患者(136結節)がRFAで治療を受けた。MWA群の中央観察期間は33か月(四分位範囲[IQR]:27~42)、RFA群は37か月(IQR:27~44)だった。2年の局所再発率(LTP:local tumor progression)は、MWA群で16.4%(20/130結節)、RFA群で30.4%(38/136結節)であり、MWA群が有意に良好だった(リスク比:0.54[95%信頼区間(CI):0.33、0.87];p=0.007)。
2年OS・肝内・肝外無再発生存期間は有意差なし、重篤な有害事象は両群2例ずつ
2年生存率(OS:overall survival)、肝内無再発生存期間(intrahepatic recurrence free survival)、および肝外無再発生存期間(extrahepatic recurrence-free survival)では両群間に有意な差は認められなかった。また両群ともに重篤な有害事象(grade2以上)は2例ずつ報告されたが、治療に関連する死亡は認めなかった。
大腸がん肝転移巣への有効性も検証が必要
現在国内の肝がん診療ガイドライン(2021年版)では「各穿刺局所療法の選択は、どのように行うのが適切か?」といったクリニカルクエスチョンに対して、穿刺局所療法としてRFAを推奨すると明記されている。しかし、今回の報告を契機にMWAの使用頻度が高まっていく可能性がある。
また、近年大腸がんの肝転移巣に対する穿刺局所療法の有用性を示した欧州の施設からの報告が散見される。「今後は国内から大腸がん肝転移巣に対するMWAの有効性を検証していくことが必要と考える」と、研究グループは述べている。
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