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エネフリード輸液によるIDPNの有効性と安全性を探索的に検討-東京医科大ほか

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2025年01月06日 AM09:20

NRI-JHで5~10点の患者を対象に検討

新潟大学は12月23日、低栄養の維持血液透析患者を対象とした「(R)輸液」による透析時静脈栄養(Intradialytic parenteral nutrition:)の効果を検討する多施設共同非盲検無作為化試験を実施し、週3回12週間で血液透析患者の栄養指標に改善は認められなかったが、食事摂取量が増加し、透析中の低血糖が減少したことを明らかにした。同研究は、東京医科大学腎臓内科学分野の菅野義彦主任教授、新潟大学院医歯学総合研究科腎研究センター病態栄養学講座の蒲澤秀門特任講師、細島康宏特任准教授らと株式会社大塚製薬工場の研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

透析患者の低栄養については、早期のリスク評価と栄養介入方法が課題となっている。栄養介入方法の1つとしてIDPNが推奨されているが、日本では適切な輸液処方や実施期間などは確立していない。IDPNには糖、アミノ酸、脂肪を併せて投与することが推奨されており、研究グループはそれらを用時混合調製できる末梢静脈栄養キット製剤である同製品に着目して最適なIDPN実施方法を探索してきた。

これまでに、栄養リスク指標(Nutritional Risk Index-Japanese Hemodialysis:)が11点以上の高リスク群の血液透析患者を対象とした、同輸液によるIDPN投与研究を実施している。今回と同様に週3回12週間投与した結果、安全に投与できたものの、栄養指標に変化はみられなかった。そこで今回はNRI-JHが低から中リスク(5~10点)の患者を対象に同輸液によるIDPNの有効性と安全性を探索的に検討した。

栄養指標には変化がなかったが、食事摂取量増加や透析中の低血糖減少を確認

研究グループは2022年、全国8施設でNRI-JHが5~10点の血液透析患者を対象にランダム化比較試験を実施した。同輸液によるIDPNを週3回12週間行い、開始前後における栄養指標、食事摂取量、血漿アミノ酸、血糖値を評価した。食事摂取量は簡易型自記式食事歴質問票を使用し、血糖値は持続血糖モニタリングで評価した。

対象患者はIDPN群20人、対照群19人、平均年齢は72歳、平均BMIは20、NRI-JHの中央値は7点だった。主要評価項目である血清トランスサイレチンの12週後の変化量は群間に差が認められなかった。その他、NRI-JHなどの栄養指標も群間に差が認められなかった。一方、食事のエネルギー摂取量とタンパク質摂取量は対照群で減少していたものの、IDPN群では12週後に増加しており、群間で有意な差が認められた。また、透析後の血漿アミノ酸濃度はIDPN群で有意に維持されていた。さらに、透析中の低血糖はIDPN群で有意な減少が認められた。また、同輸液による有害事象は発生しなかった。

継続することで間接的に栄養状態が改善する可能性を示唆

研究では、IDPNの直接的な栄養指標の改善効果を示すことができなかった。一方、IDPNを行うことで食事摂取量の増加や、透析中の低血糖の減少が観察され、継続することで間接的に栄養状態が改善する可能性が示唆された。「この研究は症例数の少ない探索研究であり、結果の解釈には注意が必要であるが、今後、最適なIDPN実施方法の確立に向けてさらなる研究が期待される」と、研究グループは述べている。

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