若年性大腸がんが世界的に増加
世界中で大腸がんに罹患する若者が増えているようだ。世界50カ国のうち27カ国で、若年性(50歳未満での発症)大腸がんの罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかになった。この研究の論文の筆頭著者である米国がん協会(ACS)がんサーベイランス研究のHyuna Sung氏は、「若年性大腸がんの増加は世界的な現象だ。これまでの研究では、主に高所得の西側諸国での増加が確認されていたが、今や世界中のさまざまな経済状況の国や地域で記録されている」と述べている。この研究結果は、「The Lancet Oncology」に12月11日掲載された。
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この研究でSung氏らは、大腸がん罹患率に関する世界保健機関(WHO)国際がん研究機関のデータベースを用いて、若年層(50歳未満)と高齢層(50歳以上)における大腸がんの発症率の傾向を比較した。データには、世界の50カ国と領土(以下、国で表記)における2017年までの大腸がんの診断年、性別、5年ごとの年齢グループの発症データが含まれていた。
その結果、直近10年間(2008〜2017年、一部の国を除く)の若年性大腸がん罹患率の年平均変化率(average annual percentage change;AAPC)は50カ国中27カ国で上昇していることが示された。特にニュージーランド(AAPC 3.97%)、チリ(同3.96%)、プエルトリコ(同3.81%)、英イングランド(同3.59%)では、顕著な上昇が認められた。一方、高齢層でのAAPCに関しては、これら27カ国中14カ国で変化が認められないか(アルゼンチン、フランス、アイルランド、ノルウェー、プエルトリコ)、低下していた(オーストラリア、カナダ、ドイツ、イスラエル、ニュージーランド、スロベニア、イングランド、スコットランド、米国)。また、若年層と高齢層の双方でAAPCに上昇傾向が認められた13カ国のうち、チリ、日本、スウェーデン、オランダ、クロアチア、フィンランドでは若年層のAAPCの方が高齢層よりも高かったのに対し、タイ、マルティニーク(フランス海外県)、デンマーク、コスタリカでは若年層のAAPCの方が高齢層よりも低かった。
直近5年間(2013〜2017年、一部の国を除く)における10万人年当たりの若年性大腸がんの年齢調整罹患率(ASR)は、オーストラリア(ASR 16.5)、米国(同14.8)、プエルトリコ(同15.2)、ニュージーランド(同14.8)、韓国(同14.3)で特に高く、ウガンダ(同4.4)とインド(同3.5)で低かった。
Sung氏は、「この懸念すべき傾向が世界規模で広がっていることは、食習慣、運動不足、過体重に関連するがんを予防し、制御するための革新的なツールを開発する必要性を浮き彫りにしている」と述べている。その上で同氏は、「このような傾向の背後にある要因を特定し、世界中の若年層や地域のリソースに合わせた効果的な予防戦略を開発するには、継続的な取り組みが不可欠だ」と話す。同氏はさらに、「若年層やプライマリケア提供者の間で、直腸出血や腹痛、排便習慣の変化、原因不明の体重減少などの若年性大腸がんに特徴的な症状に対する認識を高めることは、診断の遅れを減らし、死亡率を低下させるのに役立つ可能性がある」と付け加えている。
一方、Cancer Research UKのMichelle Mitchell氏は、「年齢を問わず、がんの診断は患者とその家族に多大な影響を及ぼす。50歳以上の人に比べて若年成人でのがんの罹患率は依然として非常に低いものの、若年性大腸がん増加の原因を究明することは重要だ」と述べている。
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