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血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか

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2024年12月20日 AM09:30

心房細動に対しシングルセルRNAシークエンス解析を用いて免疫細動の解析を実施

神戸大学は12月10日、心房細動の進行の新たなバイオマーカーとなるタンパク質「」を特定したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野の鈴木雄也医学研究員、江本拓央医学研究員、平田健一名誉教授、同分野不整脈先端治療学部門の福沢公二特命教授、大学院科学技術イノベーション研究科先端医療学分野の山下智也教授らの研究グループと、淀川キリスト教病院心臓血管外科佐藤俊輔部長との共同研究によるもの。研究成果は、「Communications biology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心房細動は、心房が不規則に興奮することで不整脈を起こし、動悸や心不全を来し得る、また心房内に血栓が形成されやすくなって脳梗塞のリスクを高める疾患だ。高齢化社会において、その発症率は増加しており、効果的な治療法の開発が急務とされている。近年の急速な分析技術の進歩により、対象とする組織について、1細胞ごとに網羅的に遺伝子発現を解析することのできるシングルセル/ヌクレイRNAシークエンス解析技術が開発され注目を集めている。

これまで、弁膜症患者の心房組織についてはシングルセルRNAシークエンス解析が行われたが、心房細動単独の心疾患についてはサンプルが得難く報告がなかった。心房細動に炎症が深く関わることは明らかにされてきたが、どのような免疫細胞が周囲の非免疫細胞と関連して、病態に関係するのかは明らかになっていなかった。

そこで研究グループは今回、淀川キリスト教病院で胸腔鏡下左心耳切除術の適応となった患者のうち、研究への同意を得た心房細動8例に対してシングルセルRNAシークエンス解析を用いて免疫細動の解析を実施した。

心房細動ではIL-1β強発現の炎症性マクロファージ増、組織常在性のマクロファージ減

その結果、骨髄球系の細胞であるマクロファージと単球は、5つのマクロファージ、3つの単球の集団に分けることができた。さらに、心房細動と正常心(公開データ)を比較すると、心房細動では、正常心と比べ、IL-1βを強発現する炎症性マクロファージが増加傾向にある反面、組織のメインテナンスを行う常在性のマクロファージが減少傾向にあることが判明。そして、組織常在性マクロファージの電子顕微鏡像を捉えることに成功した。

また、アンフィレグリンの遺伝子発現が、心房細動のIL-1βを強発現する炎症性マクロファージにおいて、正常心と比較し増加していることが明らかになった。

線維化と強く関連するCD9、TIMP1を強発現する線維芽細胞の集団を特定

次に、5例に対してシングルヌクレイRNAシークエンス解析を用いて非免疫細胞に関する解析を実施した結果、5つの線維芽細胞の集団に分けることに成功し、線維化と強く関連するCD9、TIMP1を強発現する線維芽細胞の集団を特定した。

また、骨髄球系細胞と線維芽細胞の細胞間相互作用の解析から、IL-1βを強発現する炎症性マクロファージが線維化に強く関連する線維芽細胞にEGFシグナルを伝達していることがわかった。同結果は心房細動が発生し進展する病態において、免疫細胞からEGFファミリー分泌タンパクアンフィレグリンが、線維芽細胞のEGFRにリガンドとして結合し、線維化促進シグナルを介して心房の線維化に関与する可能性を示唆している。

アンフィレグリンが心房細動の進展/持続に関与する新規バイオマーカーの可能性

さらに、心房細動患者と非心房細動患者の血漿を用いて、血液中のアンフィレグリンが進行した心房細動患者(7日以上持続する心房細動患者)でのみ発現していることを確認。同結果から、アンフィレグリンが心房細動の進展と持続に関与する新たなバイオマーカーである可能性が示唆された。

心房細動患者の線維化改善を目指した治療法開発に期待

今回の研究では、心房細動患者の左心房組織において、炎症性マクロファージが線維化と関連する線維芽細胞に線維化促進シグナルを伝達することを捉えることに世界で初めて成功し、血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなり得る可能性を初めて見出した。今後、このデータをもとにした心房細動患者の線維化の改善を目指した治療法の開発が期待される、と研究グループは述べている。

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