米国研究製薬工業協会(PhRMA)の調査によると、欧米で後期臨床開発段階にある新薬の3分の2以上が日本で開発未着手の状況にある。国内第I相試験の大多数を受託する機関で構成されている臨試協は10月に第I相試験の総数、FIH試験・FIJ試験に関する実績などに関して調査し、15医療機関のうち13医療機関から回答を得た。回答した機関には臨試協機関会員8施設中6施設が含まれている。
その結果、13施設全体の第I相試験に関する実績では合計試験数が2433試験で、そのうちFIH試験が211試験(8.7%)、FIJ試験が375試験(15.4%)だった。
第I相試験のうちFIH試験とFIJ試験の割合を比較すると、2019年までの2030試験ではFIH試験は6.5%、FIJ試験が12.9%にとどまったのに対し、20~24年はFIH試験が19.6%、FIJ試験が28.3%とこの5年間で明らかに増加していた。
FIH試験とFIJ試験について治験依頼者が外資系と内資系に分けて分析した結果、FIH試験は内資系が85%、FIJでは逆に外資系が61%と過半数を占めた。FIJ試験に関しては19年以前は外資系依頼者の比率が54%だったが、最近の5年間では74%とほぼ4分の3を占めた。
この結果について、内資系企業が海外での開発を重要視している可能性と、外資系企業が日本での開発に注力している可能性があるとした。
臨試協は「内資系の依頼が減っているとすれば憂慮すべきこと」としつつ、「外資系企業が日本で第I相試験を実施する利点を見出した可能性がある」と分析。その理由として、日本の第I相試験施設の品質の高さやプロトコル、スケジュールの変更にも柔軟性があり、IRBも迅速に対応できる強みを挙げた。
その他のメリットとして、▽円安により海外から見ると日本での実施費用が割安▽米国食品医薬品局(FDA)が治験参加者の人種的多様性を求めている▽外資系企業が高齢化が進む東アジア・東南アジア市場を重要視している――と列挙。国内では「国際共同治験実施前の日本人第I相試験の追加実施が原則不要」との通知が発出される中、日本の実施体制を海外に向けてアピールしていく必要性を訴えた。
調査結果は14日、さいたま市内で開催された日本臨床薬理学会学術総会で公表されたもの。