患部への血流遮断で変形性膝関節症の痛みが軽減
変形性膝関節症(OA)の患部への血流を遮断することで膝の痛みが軽減し、膝関節置換術の必要性を遅らせたり回避したりできる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ベルリン大学(ドイツ)シャリテ病院のFlorian Nima Fleckenstein氏らによるこの研究結果は、北米放射線学会年次総会(RSNA 2024、12月1〜5日、米シカゴ)で発表された。
画像提供HealthDay
膝関節の周りでは、いくつかの枝を持つ動脈がネットワークを形成しているが、OA患者では、これらの動脈に異常が見られる。膝動脈塞栓術(GAE)は、介入放射線科医が膝の痛みのある部位に対応する血管の枝に小さな粒子を注入し、その部位への血流を遮断する治療法である。異常な血管の塞栓は、OAに特徴的な炎症、軟骨破壊、および感覚神経の成長サイクルの抑制につながる。
この研究では、保存療法では改善が認められず、GAEを受けた中等度から重度のOA患者403人(40〜90歳)のデータを後ろ向きに解析し、GAEの安全性と有効性を評価した。治療効果として、試験開始時と追跡調査時(施術後6週間、3カ月、6カ月、1年)に視覚アナログスケール(VAS)と膝関節評価スコア(KOOS)で痛みと生活の質(QOL)を測定して評価した。
その結果、技術的成功率は100%であり、安全に施術が行われたことが確認された。手術後すぐに18%の患者で軽度の皮膚の変色や膝の痛みが認められたが、重篤な合併症の発生は報告されなかった。QOLと痛みのスコアは、1年後の追跡調査時にそれぞれ87%と71%、改善したことも確認された。
Fleckenstein氏は、「本研究では、GAEは膝の痛みを効果的に軽減し、治療後早期にQOLを改善することが確認された。これらのベネフィットは長期にわたって維持され、特に、理学療法や鎮痛薬など他の治療法で効果を得られなかった人にとって効果的であることが分かった」と話す。その上で、「GAEは、OAを原因とする衰弱性疼痛や運動障害に苦しむ多くの患者に、新たな人生のきっかけを与える可能性がある」と付言している。
また、研究グループによると、この研究では、GAEが初期段階のOAに特に効果的であることも示されたという。研究グループは、「この結果は、早期介入によってOAの進行抑制や予防が可能であり、それにより膝関節置換術などのより侵襲的な治療の必要性を減らせることを示唆している」との見方を示している。またFleckenstein氏は、「GAEは、より侵襲的な手術の必要性を減らし、医療費を削減し、OAに苦しむ無数の人のQOLを大幅に改善する可能性を秘めた治療法だ」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
▼外部リンク
・Minimally Invasive Procedure Relieves Knee Arthritis
Copyright c 2024 HealthDay. All rights reserved.
※掲載記事の無断転用を禁じます。
Photo Credit: Adobe Stock