乳児~未就学児のけが再発の包括的な研究は不十分だった
岡山大学は12月5日、1歳半までのけがの受傷歴と7歳までのけがによる病院受診の有無の関連性について検討した結果を発表した。この研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)救命救急・災害医学講座の平岡知浩大学院生、小原隆史助教、中尾篤典教授ら、同大疫学・衛生学分野の松本尚美助教、頼藤貴志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
乳児~未就学児は家庭内でけがをすることが多く、転倒や切り傷が一般的であるが、熱傷、窒息、溺水など致命的なものもある。生活環境における潜在的な危険は持続する可能性があり、再発防止は重要な課題である。先行研究では、単一のけがのみに焦点が絞られており、介入時期が不明確であるなど、この年齢層におけるけがの再発に関する包括的な研究は不十分だった。
7歳までのけが再発リスクは1.48倍、独立リスクは転落、挟まれ、溺水、誤飲、熱傷
そこで研究グループは、「21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」(厚生労働省)のデータベースを用いて、平成22年の特定の時期に日本で出生した全ての児を対象に縦断的に解析した。2万191人の対象者のうち、1万6,239人(80.4%)が1歳半までにけがを経験。乳児期にけがを経験した児では、そうでない児と比べて発達特性に関係なく、前学童期(7歳まで)のけがの再発リスクが有意に高い結果となった(オッズ比1.48)。けがの種別で比較すると、転落(オッズ比1.34)、挟まれ(オッズ比1.22)、溺水(オッズ比1.29)、誤飲(オッズ比1.35)、熱傷(オッズ比1.47)は再発の独立したリスクであることがわかった。
今回の結果について、研究グループは、「家庭内でのけが予防策を見直す必要性を示唆するとともに、将来的には、1歳半検診に関連して医療機関や母子保健行政による啓発や介入の一助となることが期待される」と、述べている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース