「患者数を理由に薬が発売されないことはあってはならない」
後藤功一氏(国立がん研究センター東病院 呼吸器内科長)は2024年11月14日、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「オータイロ(R)」(一般名:レポトレクチニブ)がROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんを効能・効果として承認されたことを踏まえて講演し、「ファーストラインとして使用することになるのではないか」との見解を示した。
後藤功一氏(ブリストル・マイヤーズ スクイブ提供)
講演はブリストル・マイヤーズ スクイブが開いたセミナーで行われたもの。同薬は11月20日に発売されている。
レポトレクチニブはROS1融合遺伝子陽性のⅣ期非小細胞肺がん患者にとってクリゾチニブ、エヌトレクチニブに続く3つ目の治療選択肢となる。既存の治療薬では使用を続けると肺がん細胞が耐性化することから、耐性化の克服が課題となっていた。後藤氏はレポトレクチニブについて、がん細胞が耐性を獲得しにくく、長期間の使用が期待できるとした特徴に触れ「画期的な薬だ。ファーストラインとして使用することになるのではないか」との考えを述べた。
後藤氏はまた、「非小細胞肺がん患者の場合、EGFRやKRASの遺伝子変異が見つかる患者さんは比較的多い一方で、ROS1融合遺伝子陽性患者は1~2%と稀だ」と説明。「国が薬を承認するためには臨床試験が必要だが、稀なドライバー遺伝子変異/転座を持った患者を多数集めること自体が難しいという現実がある」と課題感を示した。その上で、「肺がんの死亡者数は年間約7万7,000人1)。このうち、ROS1融合遺伝子陽性患者は希少とはいえ、単純計算すると約1000人が1年間で亡くなっていることになる」と指摘。「患者数が少ないから臨床試験ができず、薬が患者に届かないということはあってはならない」と強調した。
セミナーでは、ROS1融合遺伝子陽性患者も登壇した。同患者は、「運よく分子標的薬の1剤目を2年半くらい使い続けられている」と自身の状況を説明しつつ、「耐性がついてしまったらどうしようと非常に不安だ」と心境を吐露。新薬の登場については、「使える薬剤が少ない中での待望の薬だ」と感想を述べ、「耐性ができてしまっても、次の薬があると思えると安心ができる。治療選択肢が増えることが患者の願いだ」と期待を込めた。
1)がん情報サービス:肺 死亡数(2022年).
[https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html]