有用性は既報告、診断的価値や最適な使用法は検討不十分
広島大学は12月3日、45人の原因不明の発熱やその発熱からくる症状、不明熱(FUO)および不明炎症(IUO)を有する患者(FUO/IUO患者)に対して、国内では全身のがん検査として用いられることの多いFDG-PET/CTを実施した結果を発表した。この研究は、同大病院総合内科・総合診療科の小林知貴診療講師、宮森大輔診療講師、伊藤公訓教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。
FUO/IUOは医学が進歩しても一定数存在し、診断が困難なことがある。長期にわたり、発熱や炎症が続き患者の日常生活強度や生活の質へも影響する。従来の診断法では、診断に至らないケースが存在する中で、FDG-PET/CTの有用性が報告されていたが、日本人におけるFUO/IUO患者での最適な使用法、診断的価値については十分な検討がされていなかった。今回の研究では、FUO/IUO患者45人を対象にFDG-PET/CTを実施し、その診断価値を評価した。
71.1%が最終診断、内訳はNIID53.3%、悪性腫瘍8.9%、感染症6.7%
FDG-PET/CTを実施した患者の71.1%(32人)で最終診断に至った。また、不明炎症(IUO)患者では、FUO患者よりもFDG-PET/CTの診断有用性が高く、診断に寄与する可能性が顕著に見られた(IUO患者87.5%、FUO患者38.1%)。主な診断カテゴリーは、非感染性炎症性疾患(NIID)が最も多く、患者の53.3%(24人)を占めた。内訳は巨細胞性動脈炎(3例)、リウマチ性多発筋痛症(4例)、成人発症Still病(3例)、高齢発症関節リウマチ(2例)、IgG4関連疾患(1例)などの疾患が含まれていた。悪性腫瘍は8.9%(4人)、感染症は6.7%(3人)だった。
IUO患者に対してより高い有効性、最終診断がつかなかった症例は自然軽快
FDG-PET/CTは、炎症や腫瘍などの病変の部位を特定し、治療計画の策定や迅速な診断につながる重要なツールとしての役割を果たした。さらに、多変量解析により、IUO患者がFDG-PET/CTを用いた診断でより高い有効性を示すことが確認された(オッズ比67.02、95%信頼区間4.02–1119)。一方、FDG-PET/CT検査で異常を指摘されたものの、最終診断がつかなかったケースは8例認めたが、これらの患者はいずれも自然軽快した。
より大規模な検討によりFUO/IUO診断におけるFDG-PET/CTの保険適用に期待
FDG-PET/CTは、FUO/IUOの原因解明において従来の診断法に比べ、高い診断率を示した。特にIUO患者に対する有用性が際立っており、NIIDを主な原因とする炎症を、病変の部位や活動性に基づいて特定することが可能だ。これにより、診断までの時間を短縮し、患者への不要な侵襲的検査や長期入院の回避が期待される。また、FDG-PET/CTにより早期の疾患特定が可能になることで、適切な治療の選択や患者予後の改善にもつながることが示唆されている。
現時点では、悪性腫瘍以外のFDG-PET/CT保険適用は、巨細胞性動脈炎や心サルコイドーシスなど一部の疾患に限られているが、研究結果は、FUO/IUO診断におけるFDG-PET/CTの有用性を明示した。より多くの不明熱や原因不明炎症の患者に対し、FDG-PET/CTを迅速かつ広範に使用することで、医療制度の診断支援が強化され、医療の質と効率性が向上することが期待される。
「研究は単一施設での研究であり、症例数も限られているため、結果の一般化にはさらなる検証が必要だ。今後、より大規模な研究で結果が確認されることにより、診断指針の確立と政策への影響が期待される」と、研究グループは述べている。
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・広島大学 プレスリリース