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進行性骨化性線維異形成症(FOP)、初期の進行にBMP-9が関与-CiRAほか

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2024年12月09日 AM09:20

FOP異所性骨化の初期に見られる間葉系間質細胞の増殖、詳細な仕組みは未解明

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は12月4日、進行性骨化性線維異形成症()の異所性骨化の初期段階で見られる間葉系間質細胞の増殖にBMP-9が関わることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所臨床応用研究部門の池谷真准教授、重慶医科大学検査医学院の趙成珠准教授(元CiRA同部門研究員)らの研究グループによるもの。研究成果は、「EMBO Molecular Medicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

FOPは難治性遺伝性疾患の一つで、筋肉や腱、靭帯などに徐々に骨ができてしまう病気である。筋肉などの組織中に存在する間葉系間質細胞が刺激を受けて増殖し()、軟骨細胞への変化を経て、最終的に骨組織を形成する「」が進行することで、手足の動く範囲が狭くなったり、背中が変形したりする。これまでの研究により、骨形成に関わるBMPの受容体の一つであるACVR1遺伝子に突然変異が生じ、変異したACVR1が通常と異なる働きをすることでFOPの症状が引き起こされることがわかっている。間葉系間質細胞が増殖するフレアアップでは、筋組織の破壊、免疫細胞の侵入、増殖性の線維組織の形成が見られ、その後に異所性骨化へと移行していく。フレアアップは、患部の腫れや痛みなどの原因となり、患者に苦痛をもたらす。

研究グループはこれまでに、間葉系間質細胞をFOP患者由来のiPS細胞(疾患iPS細胞)から作製し、FOP患者の幹部の細胞を高精度に再現した疾患モデル細胞としてFOPの症状の悪化につながる因子の解明や骨化を抑える治療薬の候補の発見などの成果につなげてきた。今回、FOPの進行を早期に抑える治療法開発のため、異所性骨化の前段階であるフレアアップの仕組みを解明することを目指した。

BMP-9を発見、患者iPS細胞から作製した間葉系間質細胞を増殖促進

研究グループはまず、疾患iPS細胞と、そこからFOP原因遺伝子ACVR1の変異を正常に戻したiPS細胞を用いて間葉系間質細胞(FOP-iMSCおよびresFOP-iMSC)をそれぞれ作製し、FOP-iMSCをより活発に増殖させるリガンドを探索した。

TGF-βスーパーファミリーと呼ばれるリガンド群が2種類の間葉系間質細胞を増殖させる作用を比較した結果、多くのリガンドは、どちらも増殖させるもの、あるいは、どちらにも増殖作用を示さないものだった。一方で、BMP-9はresFOP-iMSCに対するFOP-iMSCの増殖促進作用が大きいことがわかった。

次に、薬剤を投与することでACVR1の変異を誘導できるFOPモデルマウスを用いて、生体でもBMP-9がフレアアップで見られる細胞増殖に作用するかを調べた。その結果、ACVR1変異を誘導したFOPモデルマウスにおいて、BMP-9を投与した部位に腫れが生じ、間葉系間質細胞が有意に増殖することを確認した。

FOPモデルマウスへのカルディオトキシン投与による骨格筋の損傷後、BMP-9産生

BMP-9は創傷治癒や組織の再生が起きている部位で発現することが知られている。そこで、骨格筋の壊死を引き起こす毒性をもつカルディオトキシンを用いてFOPモデルマウスの筋肉に損傷を与えたとき、FOPの異所性骨化においても、実際に生体でBMP-9が生産されるかどうかを調べた。

その結果、カルディオトキシン投与後、1日目から14日目にかけて、徐々に血清中のBMP-9量が上昇し、患部の組織でもBMP-9を発現した細胞が見られた。カルディオトキシン投与後、3日目では損傷部位に集まったマクロファージでBMP-9が見られたが、7日目には間葉系間質細胞でBMP-9が発現するようになり、異所性骨化が進む14日後には細胞外マトリクスに存在することがわかった。

これらの結果は、フレアアップから異所性骨化へと進行する過程で、BMP-9が持続的に組織中に存在し間葉系間質細胞の増殖を促す一方で、BMP-9を産生する細胞は経時的に変化することを示している。

BMP-9欠失のFOPモデルマウス、異所性骨形成の抑制を確認

次に、BMP-9を欠失させたFOPモデルマウスを作製し、BMP-9が存在しない場合に異所性骨が形成されるかを調べた。その結果、ACVR1の変異を誘導し、カルディオトキシンを投与したBMP-9欠損マウスにおいて、BMP-9をもつ同様のFOPモデルマウスと比較して、異所性骨の形成が抑制されることがわかった。

また、FOPモデルマウスにおいて、カルディオトキシン投与後に、BMP-9の活性を抑えることのできる抗体を投与した結果、初期の病変形成が抑えられることがわかった。

FOP異所性骨化を早期に抑える治療法開発につながると期待

今回の研究では、研究グループがこれまでに開発した、FOP患者iPS細胞由来間葉系幹細胞やFOPモデルマウスなどの疾患モデルを活用し、FOPにおける異所性骨化の早期であるフレアアップの分子メカニズムの一端を新たに明らかにした。「本研究成果がFOP患者の異所性骨化を早期に抑える新たな治療法の開発に役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。

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