口腔がん細胞で発現上昇する長い非コードRNA「LINC02154」の機能を解析
札幌医科大学は11月28日、口腔がん細胞の増殖を促進するRNA分子(LINC02154)を発見し、その作用機序を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部分子生物学講座の新沼猛講師・鈴木拓教授ら、同大学の細胞生理学講座・佐藤達也准教授、口腔外科学講座・宮﨑晃亘教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancer Science」に掲載されている。
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遺伝子はゲノムDNAからメッセンジャーRNAに転写され、さらにタンパク質に翻訳されることで機能する。しかし細胞の中にはタンパク質に翻訳されないRNA(非コードRNA)も数多く存在し、さまざまな役割を担っている。近年、短い非コードRNAであるマイクロRNAの分子機能や、疾患との関わりが明らかにされてきた。その一方、1万種類以上存在するとされる長い非コードRNA(lncRNA)の機能や存在意義については、まだ不明な点が多く残されている。
今回研究グループは、公開されているがんゲノムデータベースを用いて約8,000種類のlncRNAの発現を解析。口腔がんで発現が上昇し、かつ予後不良と相関するlncRNAを抽出した。口腔がん細胞株を用いた実験で、LINC02154が細胞の増殖や代謝に与える影響を解析した。またLINC02154と相互作用するタンパク質やマイクロRNAを、質量分析法や次世代シークエンサーを用いて探索した。
がん細胞の細胞周期・ミトコンドリア代謝を司る遺伝子制御で、がん増殖を促進
LINC02154は正常組織ではほとんど発現しておらず、口腔がんで過剰に発現していることがわかった。またLINC02154が、細胞周期やミトコンドリア代謝に関わる遺伝子の発現を制御することで、がんの増殖を促進することがわかった。
複数のマイクロRNAと相互作用で遺伝子を制御
さらに、LINC02154は複数のマイクロRNAと相互作用することで、その機能を発揮していることも明らかにした。
今回の研究成果により、LINC02154を標的とするがん治療法に応用できる可能性が明らかになった。また今回得られた知見は、まだ働きがわかっていないlncRNAの機能を研究するために役立つことが期待される、と研究グループは述べている。
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