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小児肺炎球菌結合型ワクチン接種、2回接種は3回に非劣性-長崎大ほか

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2024年12月05日 AM09:00

高額なPCV支援費用はGavi総予算の40%、WHO推奨の3回投与は必須?

長崎大学は11月28日、3歳未満小児への肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)キャッチアップ接種にてワクチン血清型肺炎球菌を制御した後、PCVの2回接種スケジュール(1回の初期接種と1回の追加接種:1p+1)が、WHO推奨の3回接種スケジュール(2p+1または3p+0)と比較して、ベトナムの小児におけるワクチン血清型肺炎球菌保菌の制御において、劣らない効果を持つことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大熱帯医学研究所小児感染症学分野の吉田レイミント教授、樋泉道子准教授、英国ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine:LSHTM)のKim Mulholland教授、Stefan Flasche教授、ベトナム国立衛生疫学研究所(National Institute of Hygiene and Epidemiology:NIHE)のDang Duc Anh教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

世界において、Gaviワクチンアライアンス(低所得国の予防接種率を向上させることにより、子どもたちの命と人々の健康を守ることを目的として2000年にスイスで設立された官民連携パートナーシップ)の支援を受け、2014年までに45か国、2019年までに60か国(対象国の80%以上)がPCVを導入した。PCVが高額であるためPCV支援費用はGaviの総予算の40%を占めており(Gaviは2009~2020年にPCV支援費用として33億米ドルを拠出)、これを削減し、他の重要なワクチンへの資金を増やすことが重要な課題となっている。

先進国での研究では、PCV導入後7年以上経過すると、ワクチン血清型肺炎球菌がほとんど見られなくなり、4回接種した場合と3回以下の接種をした場合の効果に違いがなくなることが報告されている。この知見に基づき、ワクチン血清型肺炎球菌に対する集団免疫が確立されれば、PCV接種回数を2回に減らした投与スケジュールでも、WHOが推奨する3回投与スケジュールと同様の予防効果が得られるという仮説を立て、今回の研究を実施した。

ベトナムの小児対象、4つのPCV接種スケジュールで効果検証

今回の研究は、ベトナムのニャチャン市で実施された。ニャチャン市は同大の海外研究拠点の一つである。研究対象者はニャチャン市の27のコミューン(地域)に住む小児。WHOが推奨する3回接種スケジュールでPCVをPCV介入群の3歳未満小児全員に接種した(1万2,683人が少なくとも1回PCV接種)。コミューンは、4つのPCV接種スケジュール(2p+1、3p+0、1p+1、0p+1)に無作為に割り付けられ、キャッチアップワクチン接種の1か月後からPCVの定期的な接種が導入された(期間中計3万1,385回接種)。北部の3つのコミューンは接種なしの対照群とした。

また、ニャチャン市の2歳未満の小児のワクチン血清型肺炎球菌保菌に対するPCV接種スケジュールの違いによる影響を評価するため、PCV導入前および導入後、毎年保菌調査を実施(6回の保菌調査対象計1万8,652人)。肺炎球菌の保菌と肺炎球菌血清型同定には、PCR法、培養、マイクロアレイ法が用いられた。ワクチン血清型肺炎球菌保菌の減少において、1p+1スケジュールが2p+1または3p+0スケジュールに対し劣らない効果があるかを解析した。

約3年半PCV高接種率での1p+1、2p+1または3p+0スケジュールと比べて効果劣らず

研究の結果、約3年半PCVを高い接種率で使用したところ、1p+1接種スケジュール(2回接種スケジュール、1回の乳児期初期接種と1回の9か月以降追加接種)は、2p+1または3p+0スケジュールと比べて、乳幼児のワクチン血清型肺炎球菌保菌を抑える効果において劣らないことが確認された。さらに、0p+1スケジュールも非劣性を示し、緊急の環境下における使用の可能性が示された。この結果は、特に、低中所得国における今後のPCV接種政策に有用なエビデンスを提供するものだとしている。

PCV接種プログラム費用負担を軽減、持続可能性「高」に期待

今回の研究結果は、PCVの1p+1接種スケジュールがワクチン血清型肺炎球菌保菌を抑制する代替スケジュールとなり得ることを示している。同研究結果は、ベトナム保健当局およびWHO肺炎球菌作業部会によって評価され、PCV接種政策に助言をするWHO予防接種専門家戦略諮問グループ(SAGE:Strategic Advisory Group of Experts on Immunization)に提出されるという。PCVの接種回数を減らすことで、PCV接種プログラムの費用負担を軽減し、持続可能性を高めることが期待される。これにより、GaviワクチンアライアンスのPCV予算を3分の1削減でき、その分を低中所得国における他の重要なワクチン支援に充てることで、より多くの命と健康を守ることが可能になるであろう、と研究グループは述べている。

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