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サルコペニア肥満予備群、体成分で簡便にスクリーニングする方法開発-阪大

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2024年12月03日 AM09:00

早期サルコペニア肥満、通常の健診ではリスクが見落とされる可能性

大阪大学は11月28日、サルコペニア肥満(sarcopenic obesity:SO)予備群のスクリーニング法を新たに見出したと発表した。この研究は、同大キャンパスライフ健康支援・相談センターの石橋千咲助教、中西香織准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

SOはさまざまな健康障害との関連が知られ、その早期発見・介入が重要だが、これまで早期のサルコペニア肥満に焦点を当てた研究はなく、その病態は十分に評価されてこなかった。

肥満は一般にBody mass index(BMI)によって定義されるが、BMIによる肥満評価では骨格筋量減少と体脂肪増加を同時に有する状態であるSO予備群を見逃されやすいことが問題となる。SOはメタボリックシンドロームや心血管リスクとの関連が知られているため、SOを早期に、つまりSO予備群の段階でスクリーニングし適切な介入を行うことが重要である。しかしながら、通常の健診では体成分の評価が行われないことなどから、SOのリスクが見落とされる現状がある。

SO予備群・健康群を定義、432人女性の定期健診結果から臨床指標を比較

研究グループは、同大で定期職員健診を受検した30~59歳の女性職員432人(受検年度2022年)を対象に体成分分析(InBody 270)を施行、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index:SMI)<5.7kg/m2かつ体脂肪率(PBF)≧30%を満たす群をサルコペニア肥満(SO)予備群、SMI≧5.7kg/m2かつPBF<30%を満たす群を健康(H)群と定義し、各臨床指標をH群とSO予備群で比較検討した。また、健診での測定項目に加え、血清インスリンおよびミオスタチン濃度を測定、比較検討した。

BMI・腹囲は両群の差なし、握力・中性脂肪・LDL・HOMA-Rで有意差

その結果、BMIや腹囲については両群で差がなかった一方、握力についてはSO予備群で有意に低値、中性脂肪、LDLコレステロール、インスリン抵抗性指標(HOMA-R)についてはSO予備群で有意に高値だった。

血清ミオスタチン濃度はSO予備群で低値と判明

また、血清ミオスタチン濃度はSO予備群においてH群と比較し低値だった。一般に血清ミオスタチンはサルコペニアや肥満の状態では高値となることが知られているが、今回の研究では逆の結果だった。このことより、ミオスタチンが病態の進行度によって異なる働きをする可能性が示唆された。

SO予備群への早期介入、SOへの進展予防に期待

今回の研究で、体成分分析に基づくSO予備群がすでにさまざまな代謝指標で好ましくない方向に有意差を認めていること、特に握力低値がSO予備群を特徴づける重要な因子であることが明らかとなった。今回のSO予備群の人々は、見た目の肥満を呈していない。「多くの人が美容の観点から痩せ願望を持つ傾向があるが、SOのリスクを見落とすことなく疾患を予防するためには、見た目ではなく、体の組成に目を向けることが重要と考える。そのために今後、健康診断などの場面で体成分分析や握力測定の導入が進むことを期待する。また、早期サルコペニア肥満の病態解明のため、ミオスタチンを含めた関連因子について今後のさらなる検討が望まれる」と、研究グループは述べている。

 

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