MEFV遺伝子変異有するIBDU、病態の詳細や頻度は不明だった
札幌医科大学は11月29日、分類不能炎症性腸疾患(IBDU)患者にMEFV遺伝子の変異を有している患者が多く存在していること、MEFV遺伝子変異を有するIBDU患者は腸内細菌叢が変化していること、これらの患者にコルヒチン治療が有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部消化器内科学講座の仲瀬裕志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「eBioMedicine」に掲載されている。
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炎症性腸疾患(IBD)には現在の診断基準を満たさないIBDU患者が含まれ、その病因は不明のままだ。近年、MEFV遺伝子変異を有するIBDU患者にコルヒチン治療が有効であることが報告されてきたが、これまでに大規模な研究は行われていなかった。
コルヒチンは白血球、特に好中球の作用を抑える効果があり、痛風発作の緩和や予防、家族性地中海熱の治療に用いられている。家族性地中海熱は周期性発熱と漿膜炎を主徴とする遺伝性自己炎症性疾患で、MEFV遺伝子変異との関連が明らかになっている。
IBDUと診断された患者60.1%にMEFV遺伝子変異を確認
研究グループは今回、日本のIBDU患者におけるMEFV遺伝子変異の頻度を調査し、コルヒチンに対する治療反応性を評価した。同研究は2016年7月~2022年3月の期間に、全国37の施設の396人の患者を対象として実施した、多施設共同後ろ向きコホート研究である。
研究では、IBDU患者のMEFV遺伝子変異、臨床情報、コルヒチン反応性ついて調べた。その結果、IBDUと診断された患者のうち、60.1%にMEFV遺伝子変異が認められた。遺伝子変異の中ではエクソン2変異が最も多く見られた。
MEFV遺伝子変異を有するIBDU患者のコルヒチン有効性は84.6%
また、MEFV遺伝子変異を有するIBDU患者の43.3%は典型的な家族性地中海熱の診断基準に該当。MEFV遺伝子変異を有するIBDU患者におけるコルヒチンの有効性は84.6%だった。
他のIBD患者/健常者と腸内細菌が異なり、ストレプトコッカス属「多」
これらの患者の腸内細菌叢は、IBD患者および健常対照者の腸内細菌叢とは異なっており、特にストレプトコッカス属を多く有していた。ストレプトコッカス属は連鎖球菌属とも呼ばれ、最近の報告では全身性エリテマトーデスなど、一部の自己免疫性疾患の発症に寄与している可能性が示唆されている。
細胞株を用いた実験では、MEFV遺伝子変異のある細胞株と変異のない細胞株では、産生される炎症性サイトカインが異なっていることが明らかになった。
IBDUを含むIBD、MEFV遺伝子/炎症性サイトカインに従った分類が必要
今回の研究成果により、MEFV遺伝子変異を有するIBDU患者へのコルヒチン治療の有用性が実証された。治療の観点から考えると、IBDUを含むIBDはMEFV遺伝子または炎症性サイトカインに従って、新たに分類する必要性があることが示唆された。
さらに、MEFV遺伝子変異を有するIBDUを含めた自己免疫疾患の病態に、ストレプトコッカス属など特定の菌種が寄与している可能性も明らかにすることができた、と研究グループは述べている。
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