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肉眼では見えない便潜血の画像化に成功、トイレで測定できる機器開発へ-国がんほか

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2024年11月27日 AM09:30

日常の排便で簡易的に便潜血が測定できれば、検診受検率の上昇につながる可能性

国立がん研究センターは11月19日、ハイパースペクトルイメージングを用いることで、便表面の高定量値便潜血領域を瞬時に画像化できることを証明したと発表した。この研究は、同センター先端医療開発センターとエバ・ジャパン株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Gastroenterology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

大腸がんは、日本において罹患数第1位、死亡数第2位(女性では第1位)のがん種であり、また75歳未満の年齢調整死亡率は諸外国よりも高く、死亡数減少のための対策が急務だ。米国では大腸がん死亡率はかなり減少しており、その第1の理由は検診の効果であると報告されている。一方、日本の大腸がん検診は40歳以上を対象に、2日法が行われているが、検診受診率は40%程度とされており、米国の68%よりかなり低く、がん対策推進基本計画で設定された目標値の60%には及んでいない。検診を受けない原因として「がん検診を受ける時間がない」「無症状で健康であるため検診の必要がない」という理由が挙げられる。また、便潜血検査は貯めた便から擦って採取、検体を冷所に保管するなどの手間がかかるため、これも検診を受けない原因となっている。

このようなことから研究グループは、検診受診率を増加させることが重要と考え、その解決策の一つとして、日常の排便で簡易的に便潜血が測定できれば、検診受検率の上昇につながると考えた。そこで、ヒトの目では評価しにくい物質の特性や状態を評価することができる「」を活用すれば、便表面の潜血を画像化することができ、その場で便潜血を検出することが可能になるのではないかと予測し、研究を開始した。

ハイパースペクトルイメージングは物体から得られた光の波長を細かく分析し、画像を作成する技術。肉眼では見えない多くの波長の情報を取得できるため、物体の成分や状態を高精度で把握し、農作物の生育状態、食品の鮮度評価、環境汚染物質の検出、建造物の劣化診断などさまざまな分野で活用されている。医療分野への応用では、組織や細胞の状態を非侵襲的に評価することが可能であるため、例えば、がん細胞の検出や皮膚疾患の診断など、病気の早期発見や効率的な診断・治療が可能になることが期待されている。

ハイパースペクトルイメージングで便表面の高定量値便潜血領域の瞬時画像化に成功

2021年10月~2022年4月まで間、国立がん研究センター東病院で下剤を病院で飲む方法で大腸内視鏡検査を受けた100人の患者に協力してもらい、最初の50人(がん患者28人)を、判定画像を作成するためのA群、残りの50人(がん患者26人)を、判別画像の精度を検証するためのB群とした。解析対象は下剤の影響の少ない最初に排泄された便とした。

A群では、便表面から100か所(1検体につき2か所)をランダムに選び、その部位の便潜血定量値を測定し、また同部位をハイパースペクトルカメラで撮影し、得られたスペクトル特徴の違いを、機械学習などにより解析した判別画像をエバ・ジャパンで作成した。

大腸がん検診での便潜血検査のcut off値は定量値100ng/mlだが、今回の目的は大腸がん検診率の向上であり、偽陽性率をより少なくするためcut off値を400ng/mlと高く設定した。B群では、A群同様ランダムに250か所(1検体につき5か所)を、A群で作成した判別画像で判定し、実際正しく判定できているかその精度を検証した。評価は、感度・特異度・正診率・陽性的中率・陰性的中率とした。

結果、A群では、感度、特異度、正診率、陽性的中率、陰性的中率がそれぞれ77.1%、96.9%、90.0%、93.1%、88.7%である高い精度の判別画像を作成できた。肉眼でもわかる血液が全体に広がった便は、便全体が画像化された。肉眼ではわからない便潜血は、便の一部に不規則に画像化された。陰性の場合は画像化されなかった。また精度検証でも、感度・特異度・正診率・陽性的中率・陰性的中率がそれぞれ83.3%、92.9%、90.8%、76.3%、95.3%であり、高い精度で全鮮血定量値400ng/mlの領域を画像化できることが確認された。

色での識別ではなく、血液の存在する領域のみを画像化していることを確認

次に、便潜血画像化ソフトが水、ミルク、また血液に近い色のトマトジュース、紅茶、珈琲内に血液を垂らした液体モデルと、便模型の表面に新鮮血、凝固血を塗布したモデルと、模型内に血液を含ませたモデルでの検証試験を行った。液体検証では、水面を通過し、色での識別でなく確実に血液の存在する領域のみを画像化していることを確認した。一方、便模型検証では便表面の血液は画像化されたが、便内の血液は画像化されなかった。以上より、肉眼では見えない便表面の高定量値便潜血の画像化に成功した。

日常の排便時にトイレ内で便潜血が判定できる機器を開発中

同技術を実際のトイレで活用することで、非常に簡便に便潜血の測定が可能になり、国内だけでなく世界に広がる可能性がある。実際に研究グループは、トイレで使用できる機器を現在開発中だという。

今後、多くの人に使用してもらうことが可能になれば「がん検診を受ける時間がない」「無症状で健康であるため検診の必要がない」という理由で大腸がん検診を受けていなかった人の大腸がんの発見につながる。また、検診の必要性が啓蒙されることにより、検診受検率の更なる上昇につながることが期待される。そのためにもできるだけ早期の製品化を目指す、と研究グループは述べている。

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