ロボット支援による直腸がん手術の利点は不明だった
横浜市立大学は11月15日、ロボット支援による直腸がん手術が、腹腔鏡手術に比べて男性患者の性機能をより良く保つ効果があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大附属市民総合医療センターの沼田正勝講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Annals of Surgery」にオンライン掲載されている。
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直腸がん手術では、直腸の周囲にある自律神経が傷つくことで、男性に性機能障害が起こることが知られている。特に開腹手術の場合、術後の性機能障害の発生率は約68%と高いことが報告されている。男性の性機能障害には、射精障害(射精ができない、精液を伴わない射精など)、勃起障害(勃起の程度が弱まる)、性交障害(勃起不全のため性交ができない)といった具体的な種類がある。男性にとって性機能障害は、生活の質の低下や不妊の原因になるため重要な合併症だが、直腸がんに関する過去の研究では、主要な評価項目として検討されたことはほとんどなかった。
さらに、直腸がん手術の方法は2010年代に腹腔鏡手術が普及し、2020年以降はロボット手術も広がっている。しかし、ロボット手術が腹腔鏡手術と比べてどのような利点があるかについては、十分に明らかになっていなかった。
射精障害/性交障害発生率、腹腔鏡群と比べてロボット群で「低」
研究グループは今回、研究母体である腹腔鏡下大腸切除研究会に所属する全国の大学、がんセンター、地域基幹病院など49施設において、直腸がんに対して腹腔鏡またはロボット手術を行う予定の70歳以下の男性患者410人を対象に行った。性機能アンケートを、術前と術後(3か月、6か月、12か月)の合計4回実施。具体的には、射精機能アンケート、勃起機能アンケート(勃起高度スコアEHS、国際勃起機能スコアIIEF-5)について調査した。
その結果、ロボット手術群と腹腔鏡手術群で患者背景を揃えたうえで、発生率が比較された。術後12か月の時点で、射精障害はロボット群で25.0%、腹腔鏡群で40.9%とロボット群で有意に低く、さらに、性交障害発生率はロボット群で17.8%、腹腔鏡群で29.0%とロボット群で低い傾向が示された。
今後も性機能障害のリスク因子解析など、さまざまな副次解析を予定
ロボット手術が射精機能および性交機能に対して有益であることが明らかになったのは世界初となる。同研究結果により、男性患者に対するロボット手術の比率が増加し、性機能障害に苦しむ患者が減少することが期待される。
「さらに今後は、性機能障害のリスク因子解析や、年代毎の性機能障害発生率(40~60代)など、さまざまな副次解析を予定している」と、研究グループは述べている。
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