手術ロボットが動画で手術手順を学習
ロボットが初めて、経験豊富な外科医による手術動画を見て学習し、その手術手技を人間の医師と同じくらい巧みに実行できたとする研究結果が、米ジョンズ・ホプキンス大学のAxel Krieger氏らにより報告された。研究グループは、「このような模倣学習を利用して手術ロボットをトレーニングすることにより、手術中に必要な手技を逐一プログラムする必要がなくなり、ロボットが人間の手助けなしで複雑な手術を行えるようになることが期待される」と述べている。この研究結果は、ロボット学習学会(CoRL 2024、11月6〜9日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。
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研究グループの説明によると、この手術ロボット(ダヴィンチ・サージカルシステム、以下、ダヴィンチシステム)は、ChatGPTの基盤と同じ人工知能(AI)を搭載しているが、言葉やテキストの処理を中心に行うChatGPTとは異なり、動きを数学的に表現する言語であるキネマティクス(運動学)に重点を置いている。ダヴィンチシステムはすでに医療現場で広く使用されているが、研究グループによると、その精度は低いという。研究グループは、その欠点を克服する上で重要なのが、モデルに絶対的な動きではなく、相対的な動きを実行させるようにトレーニングすることだと述べている。
今回、研究グループは、この手術ロボットに何百本もの手術動画を見せ、手術に必要とされる3つの重要な手技(針の操作、体組織の持ち上げ、縫合)を実行できるようにトレーニングした。その結果、手術ロボットは、それらの手技を人間の医師と同じくらいの精度で行えるようになったことが確認された。
研究グループのメンバーであるジョンズ・ホプキンス大学のJi Woong Kim氏は、「われわれが画像入力するだけで、AIモデルが適切な動作を見つけ出す。数百回のデモンストレーションだけで、モデルは手技を学習し、未経験の新しい環境にも適応できることが分かった」と述べている。Krieger氏はこの点について、「このモデルは、われわれが教えていないこともとても上手に学習する。例えば、針を落としても自分で拾って動作を続ける。これは、私が教えたことではない」と説明している。
研究グループは現在、この手術ロボットに縫合のような外科手術の部分的なタスクではなく、手術全体を行えるように教えている最中だという。Krieger氏は、「これ以前の手術ロボットでは、手術の単純な部分を行わせるのに必要な全ての作業を手動でコーディングする必要があった。そのため、ロボットに1種類の手術のための縫合を教えるのに10年かかることもあり得た」と話す。さらに同氏は、「今回の手術ロボットでは、模倣学習のために、さまざまな手術手技の記録を集めるだけで、ロボットにその手順を数日で学習させられる点が新しい。これにより、医療ミスを減らし、より正確な手術を実現しながら、自律性の目標に向かって加速することができる」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
▼外部リンク
・Surgical Robot Transformer (SRT): Imitation Learning for Surgical Tasks
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