積極的監視/放射線/手術療法後、患者の後悔を定量的に評価
北海道大学は11月15日、前立腺がんと診断され手術療法、放射線療法、または積極的監視療法の治療を選択した患者さんの治療後の後悔に関する研究結果を発表した。この研究は、同大大学院保健科学研究院の佐藤三穂准教授、北海道大学病院泌尿器科の大澤崇宏講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Urology誌」に掲載されている。
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前立腺がんは、prostate-specific antigen(PSA)等の診断技術の発達で早い時期に診断されることが多いがんである。早期の前立腺がんは、手術療法、放射線療法、積極的経過観察(監視療法)のいずれの治療を選択しても同程度の予後が示されており、長期の生存期間が得られることから、がんサバイバーの治療後の満足を改善することは重要な課題となっている。しかし、国内において、実際に治療を受けた前立腺がん患者の後悔度を評価し、どのような要因が後悔に影響を与えるかを明らかにした研究は行われていなかった。
そこで今回の研究では、前立腺がんと診断された患者を対象とし、質問紙調査と診療録調査を実施した。治療後の後悔はDecision Regret Scale日本語版を用いて評価した。意思決定プロセスについては、医師から十分に説明を受けたか、医師に治療に関する心配や疑問を十分に伝えたかについて尋ねた。現在のQOLについては、前立腺がん患者用のQOL質問紙であるExpanded Prostate Cancer Index Composite日本語版を用いて評価した。
371人が解析対象となり、その内訳は手術療法が149人、放射線療法が202人、積極的経過観察(監視療法)20人であった。治療から調査の回答までの期間の中央値は64か月であった。
治療決定時に医師-患者「情報共有できた」は後悔度「低」
治療3群で後悔度を比較した結果、有意な差は認められなかった。一方、治療決定時に医師から十分な説明を受け、かつ医師へ心配や疑問を伝えることが十分できたと回答した患者は後悔度が低いことが明らかとなった。
また、治療後の排尿機能、排便機能、ホルモン機能におけるQOLが不良な患者において、後悔度が高い結果であった。治療後のQOLが不良な患者でも、治療決定時に医師から十分な説明を受けたと回答した患者、医師へ心配や疑問を伝えることが十分できたと回答した患者は、そうでない患者と比較して後悔度が低いという結果であった。
SDMの重要性を示す
今回の研究は、前立腺がん患者の治療後の後悔を減らすためには治療後のQOLの維持が重要であることに加え、治療決定時の医師-患者の双方向の情報共有が後悔に関連することを明らかにした。同研究は、医師と患者で共同して治療の意思決定をしていく共有意思決定(Shared Decision Making)の重要性を示した。今後は、限られた資源の中で、いかに共有意思決定を促進していくかが大切であると考える、と研究グループは述べている。
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