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3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター

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2024年11月21日 AM09:10

SLOIT開始後、いつ・どのくらい牛乳を摂取できるようになるか

国立成育医療研究センターは11月15日、4歳未満の牛乳アレルギーの小児に対し緩徐微量経口免疫療法()を行った際の、3年後の耐性獲得率(耐性:原因食物を食べられるようになること)を求めるモデルを日本で初めて開発したと発表した。この研究は、同センターアレルギーセンターの平井聖子氏、山本貴和子氏、臨床研究センターの朴慶純氏らの研究グループによるもの。研究成果は「World Allergy Organ Journal」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

食物アレルギーは、患者にもその家族にも大きな負担を強いる疾患であり、牛乳は食物アレルギーの原因として頻度の多いものの一つだ。食物アレルギーの治療として経口免疫療法が、完全除去と比較して耐性獲得を達成する可能性を高めることがシステマティックレビューで示されているが、4歳未満で検討された研究は多くない。また、牛乳アレルギーをもつ子どもの家族は、いつどのくらい飲めるようになるのか不安を抱え、先の見通しについて知りたいという声が多く寄せられているが、食物アレルギーの耐性獲得にはさまざまな因子が関連することがわかっており、回答するのが困難だった。これまで、複数の関連因子による牛乳SLOITによる耐性獲得を予測するモデルはなく、今回の研究ではそのモデル開発と検証を試みた。

SLOIT開始前TARC値など4つの変数を用いて予測モデル開発

今回の研究では、同センターで、1)2014年1月1日~2018年10月31日に初診を受け、2) 牛乳特異的IgEが陽性、3) 牛乳や乳製品を完全に除去、4) 4歳未満で牛乳の緩徐微量経口免疫療法を開始、5) 3年以内に牛乳アレルギーの耐性獲得できたか、緩徐微量経口免疫療法を3年間継続できた、という条件にあてはまる191人を対象とした。研究における「耐性獲得」は、「牛乳200mlを飲むことができること」と定義した。

対象191人を、初診時期によってA群(120人:2014年~2016年に初診)と、B群(71人:2017年~2018年に初診)の2つに分けた。A群のデータセットを用いて、ロジスティック回帰分析により、3年後に牛乳アレルギーの耐性を獲得する予測確率を求めるモデルを開発した。

モデル開発の変数は、「SLOIT開始月齢」「SLOIT開始前牛乳特異的IgE値」「SLOIT開始前TARC(アトピー性皮膚炎の重症度の指標)値」「SLOIT開始1年後牛乳特異的IgE値」とした。開発したモデルについて、A群のデータセットを用いて内的検証を行い、B群のデータセットを用いて外的検証を行った。

ROC-AUCは0.83と良好な結果、開始時のアトピー性皮膚炎の状態も影響することを示唆

「SLOIT開始月齢」「SLOIT開始前牛乳特異的IgE値」「SLOIT開始前TARC値」を用いた予測モデルについて、A群のデータセットを用いて受信者動作特性曲線(ROC-AUC)を求めたところ、0.80(95%信頼区間(CI):0.72-0.88)と良好な予測能を示した。検証群にこのモデルを適用したところ良好な予測能が示された。さらに「SLOIT開始1年後の牛乳特異的IgE値」を加えたROC-AUCは0.83(95%CI:0.76-0.91)だった。

今回、低年齢児における牛乳緩徐微量経口免疫療法の3年後の耐性獲得を予測するモデルが開発された。欠損値が少なく容易に入手できる項目、簡便に用いることのできるモデル作成を目指して開発に取り組み、結果、アトピー性皮膚炎の重症度が予後に影響することも示唆された。「食物アレルギーで悩まれている方々に最適な食物アレルギー診療を提供したい。実際の診療においてこの予測モデルを適切に活用し、食物アレルギー診療の一助にしたい」と、研究グループは考えている。

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