統合失調症に対する左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激の有用性は?
藤田医科大学は11月7日、統合失調症に対する新規治療法「間欠的シータバースト刺激」の有用性を検証し、その結果を発表した。この研究は、同大医学部精神神経科学講座の岸太郎教授、佐久間健二講師、岩田仲生教授、東京慈恵会医科大学医学部精神医学講座の鬼頭伸輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。
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現在、統合失調症には抗精神病薬を用いた薬物治療が行われることが一般的だ。しかし、抗精神病薬は陽性症状には有効である一方、陰性症状や認知機能障害への効果は限定的であるため、これらの症状に対する新規治療法の開発が精神科医療の喫緊の課題だった。最近さまざまな精神疾患に対する新たな治療法として、「反復経頭蓋磁気刺激療法」が注目されている。
反復経頭蓋磁気刺激療法は、脳の特定の部位に繰り返し磁気刺激を与え、同部位の活動を変化させることにより、精神症状の緩和を目指す治療法。日本では現在、うつ病に対してのみ反復経頭蓋磁気刺激療法が行われているが、諸外国においては、統合失調症の陰性症状や認知機能障害に対する左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激の有用性が検討されている。しかし、各研究の結果は一致していなかった。
そこで研究グループは、系統的レビューとネットワークメタ解析を用いて既報の研究データを統合し、統合失調症の陰性症状や認知機能障害に対する左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激の有効性と安全性を検証した。
統合失調症の陰性症状・認知機能障害・うつ/不安症状への有効性と安全性を確認
その結果、左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激は、統合失調症の陰性症状、認知機能障害、うつ症状や不安症状に有効であることが明らかになった。また、同治療法は安全性にも優れていることが判明した。
統合失調症以外の精神疾患で認められる「うつ症状」にも有効である可能性
今回の研究成果により、左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激が統合失調症に対する治療方法の一つとなることが期待される。また、研究グループは双極症うつ病のうつ症状にも左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激が有効である可能性を見出している。
「統合失調症の陰性症状とさまざまな精神疾患で認められるうつ症状は似た症状であり、左背外側前頭前野への間欠的シータバースト刺激は、疾患の垣根を越えて、このような症状に有効である可能性がある」と、研究グループは述べている。
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