エーザイは15日、レカネマブ(製品名「レケンビ」)が早期アルツハイマー病治療薬として欧州医薬品庁・欧州医薬品委員会(CHMP)から承認勧告されたと発表した。同剤は、欧州で承認申請し、7月にCHMPから承認否定の見解が出され、同社は再審議を求めていた。今回CHMPは、脳内に浮腫や出血が起こる副作用のアミロイド関連画像異常(ARIA)のリスクの高いApoEε4遺伝子のホモ接合を適応から除外することで、副作用リスクより疾患の進行を遅らせるベネフィットが高くなると判断した。今後、承認勧告から67日以内に欧州委員会が最終判断を行うが、日米欧中の主要市場で承認が出揃う見通しとなった。
CHMPは、「制限された患者集団ではベネフィットがリスクを上回ると結論づけた」と発表し、適応の範囲を説明した。承認勧告された適応は、「ApoEε4ステータスが非保有またはヘテロ接合体である成人におけるアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度認知症の治療」。同社によると、提出していた申請データに基づき、どのような対象患者にすることで副作用リスクを有効性が上回るかといった議論を重ねた。
再審査では、ARIAのリスクが最も高い患者のデータを除外したサブグループ解析を検討した。それによると、ApoEε4ステータスが非保有またはヘテロ接合体患者では8.9%がARIA-E(浮腫)を経験したのに対し、全患者では12.6%。ARIA-H(出血)を経験したのは12.9%に対し、全患者では16.9%だった。プララボ群では、ARIA-E、ARIA-Hそれぞれで1.3%、6.8%だった。
安全対策として治療開始前と治療開始後の決められた投与開始前にMRIスキャンなどを求めた。
同剤に対するCHMPの承認否定の見解に対し、エーザイの内藤景介代表執行役専務は8月、日米の承認根拠になった第III相試験の結果を挙げ「自信に揺るぎはない」と述べ、CHMPとの連携により、早期の承認取得を目指す姿勢を示していた。
内藤氏は、治験のプロトコルと解析方法は事前に欧州含む世界各国の当局と協議して決定したものだとし、その上で、事前協議済みの主要評価項目、副次評価項目の全てを達成して、審査されたものであることを強調していた。
同社によると、欧州の認知症患者数は690万人と推定される。
なお、英国は8月、今回と同様の適応で承認している。