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転移性尿路上皮がん、一次治療における新たな選択肢への期待

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2024年11月12日 PM02:00

根治切除不能な尿路上皮がんに対する一次治療の追加承認を取得

MSD株式会社は2024年10月31日、本年9月にPD-1抗体「(R)」(一般名:)が根治切除不能な尿路上皮がんに対する一次治療として「パドセブ(TM)」(一般名:エンホルツマブ べドチン)との併用療法および単独療法の追加承認を取得したことを受け、メディアセミナーを開いた。


菊地栄次主任教授(MSD提供)

尿路上皮がんは、腎盂、尿管、膀胱、尿道の内側を覆う尿路上皮に発生するがんで、膀胱がんが最も多い1)。日本では2019年に約2.3万人が新たに膀胱がんと診断され、2020年に約9000人が亡くなっている2)
聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科学の菊地栄次主任教授は、「膀胱がんは高齢患者が多いのが特徴で、60歳以上が約93%、70歳以上が約76%を占める2)」と述べた。

現在、未治療の切除不能または転移性尿路上皮がんに対しては、プラチナ製剤を中心とした化学療法が一次治療として推奨されている。菊地主任教授は、「一次治療としての化学療法は奏効率が5~7割と比較的高いものの、持続力がないという問題点がある」と指摘。また、「局所進行性または転移性尿路上皮がんで一次治療を受けた患者のうち、三次治療を受けた患者は31%というデータがある3)。実臨床でも、副作用がつらいなどの理由で三次治療に行き着かないケースがある」と現状の治療における課題を述べた。

シスプラチン不適格患者に対する新たな治療薬の意義は大きい

菊地主任教授は、今回の追加承認の根拠の一つとなった、国際共同第3相試験KEYNOTE-A39/EV-302試験(化学治療歴のない根治切除不能な尿路上皮がん患者886例<日本人40例を含む>が対象)の結果についても説明を行った。

主要評価項目である無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)については、ペムブロリズマブ+エンホルツマブ べドチン投与群のPFS中央値が12.5か月だったのに対し、化学療法群では6.3か月という結果だった。また、もう一つの主要評価項目である全生存期間(Overall Survival:OS)についても、ペムブロリズマブ+エンホルツマブ べドチン投与群のOS中央値が31.5か月だったのに対し、化学療法群では16.1か月で、PFS、OSともに2倍延長していた。

治療を行う医師にとっての重要なポイントとして菊地主任教授が挙げたのは、シスプラチン不適格な症例における成績。化学療法に用いられるシスプラチンには、腎機能をはじめとする不適格基準が設けられている。シスプラチンを用いないGCarbo療法もあるが、ガイドラインの推奨度は低いという課題があった。菊地主任教授は、「ペムブロリズマブ+エンホルツマブ べドチンは腎機能に依存しない。本試験の結果でも、シスプラチン適格性の有無にかかわらず、ペムブロリズマブ+エンホルツマブ べドチン投与群ではPFSの延長を認めた。私たちにとってアンメットメディカルニーズであったシスプラチンが使えない患者さんに対する新たな治療薬が出てきたことに大きな意義がある」と強調した。

1)国立がん研究センター:がん情報サービス「膀胱がんについて」(2024年11月1日閲覧)
https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/about.html
2)国立がん研究センター:がん情報サービス「がん種別統計情報 膀胱」(2024年11月1日閲覧)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/21_bladder.html
3)Kita Y, et al. Int J Urol.2024; 31(5): 552-559

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