遊離皮弁移植できない場合の頭頸部再建、有茎皮弁での再建の有用性を検証
大阪公立大学は11月1日、頭頸部再建において、血管をつないだままの皮弁(有茎皮弁)を移植する方法の有用性を検証したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科形成外科学の小島空翔病院講師、元村尚嗣教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Plastic and Reconstructive Surgery – Global Open」にオンライン掲載されている。
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頭頸部再建は、耳鼻咽喉科において頭頸部がんの切除が行われた後、形成外科において組織欠損部を充填・被覆するために行われる。頭頸部がん切除後は口腔内と頸部がつながってしまうため、口腔内の唾液や細菌が頸部へ流れ込み、感染や最悪の場合には頸部血管の破綻・大出血を起こす。また、口腔内に欠損ができると、食事の際に食べ物が外へ漏れ出て飲食が困難になり、顔面に大きな欠損ができると、外見が損なわれる。そのため、頭頸部再建を行い口腔内と頸部を遮断することで飲食を可能にし、整容性を改善する。遊離皮弁は、ある程度自由に欠損部へ移植できるが、患者の状態により遊離皮弁を移植できない場合には、血管を切り離さない有茎皮弁での再建が必要である。
有茎広背筋皮弁による頭頸部再建行った22症例を対象
今回の研究は、2003年から2024年の11年間に同大医学部附属病院(前・大阪市立大学医学部附属病院)において、有茎広背筋皮弁による頭頸部再建を行った22症例を対象に検証した。
放射線照射により頸部血管の信頼性が乏しい場合や、遊離皮弁による移植後に皮弁が壊死した場合の再手術などに対し、有茎広背筋皮弁での頭頸部再建が行われた。
通常より遠位に皮膚をデザイン、検証した全症例で有茎広背筋皮弁の定着を確認
通常の広背筋皮弁は腋窩部の胸背動脈を栄養血管として、腋窩から腰背部にかけて広背筋上に皮膚をデザインして、皮膚、脂肪、筋肉、時には骨を採取する。しかし、通常の皮膚のデザインでは頭頸部の欠損を覆うことができないため、本法では通常よりも遠位に(腋窩から離して)皮膚をデザインした。この際に第10後肋骨動脈外側皮枝を含めることで、皮膚の血流は良好となり、安全に皮弁を採取することができる。
頭頸部再建の欠損は、口腔底、舌、頸部皮膚、下顎骨など腫瘍の範囲、大きさによって切除される範囲が異なる。広背筋皮弁の皮膚は程よい大きさがあり皮膚を分割して用いることができるため、口腔側と頸部皮膚のような全層欠損となった場合でも、表面と裏面の両方の欠損を1つの皮膚から覆うことができる。また、下顎骨が欠損した場合は、肋骨を皮弁に付着させることで、下顎骨の再建も同時に行うことができる。
これらの方法で頭頸部再建を行い、全ての症例で皮弁の生着を得られた。
頭頸部再建全体の治療成績向上につながると期待
今回の研究は有茎広背筋皮弁で頭頸部再建を行った症例を集め、有用性を示した最初の報告である。頭頸部再建において、遊離皮弁が第一選択肢となることは一定のコンセンサスが得られている。しかし、遊離皮弁の使用がためらわれる症例においては、有茎広背筋皮弁が有用であると考える。「頭頸部再建の方法の選択肢の一つとして本法が用いられることで、頭頸部再建全体の治療成績向上が期待できる」と、研究グループは述べている。
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