潜在性心房細動の検出率に人種差、その理由は?
国立循環器病研究センターは10月30日、植え込み型ループレコーダーのReveal LINQ(メドトロニック社)を植え込んだ1,604例のうち基準に合致した271例を対象に潜因性脳梗塞や原因不明の失神などの原因となる不整脈を調べる研究を実施し、その結果を発表した。この研究は、同センターの豊田一則副院長、草野研吾副院長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Heart Association」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
心房細動は脳梗塞の原因として有名であるが、一過性に出現するため通常の心電図検査だけでは診断に至らないことがある。近年、植え込み型ループレコーダーと呼ばれるごく小さなセンサー(長さ6cm程度の細い棒状)を胸壁皮下に埋め込んで、最長3年間の心電計記録ができるようになった。これを用いて、潜在性心房細動がみつかる機会が飛躍的に増えた。一方、潜在性心房細動の検出率には人種差があるとの報告もあるが、詳しくはわかっていなかった。
国際共同前向き登録研究Reveal LINQ Registryで検討
Reveal LINQ Registryは、2014年3月~2018年1月にかけて、潜因性脳梗塞や原因不明の失神などの原因となる不整脈を調べるために、Reveal LINQを植え込んだ1,604例を登録した国際共同前向き登録研究。日本を含む世界12か国51施設が参加した。このうち、潜因性脳梗塞患者で研究の組み入れ基準に合致する271例(女性63%、平均年齢61.6歳、うち日本人60例)を用いて今回の研究を行った。
日本人は全体を通してどのタイミングでも海外集団より検出率が高い
レコーダー装着後36か月間の心房細動検出率を追跡したところ、全例で3か月後に6.0%、12か月後に13.6%、18か月後に18.0%、36か月後に28.2%だった。日本人は全体を通してどのタイミングでも海外の集団より検出率が高かったこともわかった。グラフに示すと、初めの3~4か月間の検出率が目立って高いように見えたが、統計学的な有意差はなかった(P=0.58)。
心房細動は高齢者で検出率が高まるため、年齢で5つに分けたグループでの心房細動検出率を検討した。その結果、70歳以上の集団で検出率が目立って高くなっていることがわかった。多変量解析でも、年齢が心房細動検出に有意に関連する唯一の要因であることがわかった(1歳毎にハザード比1.05, 95%信頼区間1.02–1.07)。
日本人はレコーダー装着前のMR血管造影などの検査実施頻度が海外より高い
日本人とそれ以外の集団では、レコーダー挿入前の診療内容にも違いがみられた。例えば、脳動脈の狭窄を評価するためのMR血管造影の施行率は両者で91.7%対18.5%と大差があり、頭蓋内動脈狭窄に由来する脳梗塞患者(つまり潜因性脳梗塞ではない)が日本人以外に多く含まれていた可能性が考えられた。
271例中11例(4.1%)の患者が36か月以内に脳梗塞ないし一過性脳虚血発作を再発した。また期間中に心房細動が見つかった患者は、見つからなかった患者よりも抗凝固薬を多く服用し始めていた(64.7%対5.3%)ことがわかった。
原因不明の脳梗塞に対し、植え込み型ループレコーダーで心房細動を調べることは重要
今回の研究結果から、日本人の潜因性脳梗塞患者に植え込み型ループレコーダーを用いることで、潜在性心房細動が見つかる頻度は、海外に比べて比較的高いことがわかった。また日本では脳梗塞の原因を調べる検査をきちんと行っているようで、それらの検査で原因が見つからず「原因がわからない」脳梗塞と診断された場合には、植え込み型ループレコーダーで心房細動を調べることが重要だ。「心房細動が見つかることで、抗凝固薬での再発予防を適切に行ったり、状況によってはカテーテルアブレーションや左心耳閉鎖術を行うことで、脳梗塞の再発をより低く抑えることが可能になると考えられる」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立循環器病研究センター プレスリリース