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双極症、RNF216のコピー数バリアントと有意な関連を発見-名大ほか

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2024年11月06日 AM09:20

BD発症に関与する遺伝要因、シナプス関連遺伝子全体やエクソン以外の探索は未実施

名古屋大学は10月30日、国内多施設共同研究により、シナプス関連遺伝子に注目した症例対照研究を実施し、RNF216遺伝子の領域にあるまれなコピー数バリアントが双極症()と関わることを新たに発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の中杤昌弘准教授、医学部附属病院ゲノム医療センターの久島周病院講師、大学院医学系研究科の尾崎紀夫特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

BDは、躁/軽躁状態とうつ状態の間の気分変動を特徴とする頻度の高い精神疾患である。BDの発症には遺伝要因が関与していることが知られており、まれなコピー数バリアント(rare )の関与が注目されている。研究グループは、これまで日本人を対象としたrare CNVデータ解析を行い、DLG2、PCDH15、ASTN遺伝子にあるCNVがBDと関連することを報告してきた。前者2つの遺伝子はシナプスに関わる遺伝子だった。このことから、他のシナプス関連遺伝子も、BD発症に関与することが考えられるが、これまでにシナプス関連遺伝子全体の網羅的な探索事例はなかった。また、これまでの研究では遺伝子中のエクソン領域に重なったrare CNVデータにのみ注目していたが、エクソン以外の領域の中には遺伝子の調節機能を持つ領域も知られており、そのようなCNVもBD発症にかかわっている可能性が考えられる。そこで今回の研究では、日本人のrare CNVデータをもとにエクソン領域に限定しないでBDと関連するシナプス遺伝子を探索することにした。

患者1,839人を含むゲノム解析を実施、RNF216と重なるCNVに有意な関連を発見

今回の研究では、BD患者1,839人および対照者2,760人のDNAにアジレント社製のアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション法(aCGH)を実施し、CNVデータを取得した。このデータをもとに、シナプス遺伝子オントロジー(SynGO)データベースに基づいて、CNVが重なっていたシナプス関連遺伝子37種に絞り込み、BD患者と健常者間で各シナプス遺伝子と重複するCNVを保有する割合を比較した。その結果、RNF216と重なるCNVが、BDと有意に関連していることを発見した。RNF216と重なるCNVは、BD患者13人(0.71%)と対照者4人(0.14%)で検出され、BD患者に有意に多く確認された。

また、検証のため、前述の対照者とは異なる対照者823例に対してニンブルジェン社製aCGHにより評価したところ、2人(0.24%)で同一領域のCNVが検出された。この保有割合は、アジレント社の対照者と同程度だった。さらにBD患者とその両親を対象に取得されたエクソーム解析のデータからCNVを検出したところ、143人のBD患者のうち2人(1.4%)で同一領域のCNVが検出された。これは、最初のアジレント社のBD患者の保有割合より高いものだった。

同定したCNV、7p22.1微小重複症候群の原因と一部重なる領域に存在

今回同定したRFN216と重なったCNVが存在する領域は、7p22.1微小重複症候群という精神疾患における遺伝上の原因と考えられる領域(最小臨界領域)と一部重なっていた。7p22.1微小重複症候群は、BDと異なる臨床症状を持つ疾患だが、今回の研究の成果から両疾患の発症にどのように寄与するかを評価できる可能性がある。今回の研究ではさらに、SynGOデータベースを用いてBDに関わるシナプス関連遺伝子セットを探索した。その結果、シナプス後膜の不可欠な構成要素に関わる遺伝子セットがBDと有意に関わることも発見した。

BDの病態解明や個別化医療の実現につながると期待

「本成果を含むゲノム解析の結果を活用することで、病的CNVを起点としたBDの病態解明から、同疾患の病態に基づく個別化医療の実現に寄与することが期待される。将来的には、早期のリスク評価と予防的介入により、患者のQOL向上につながると期待できる」と、研究グループは述べている。

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