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ヒト腸管樹状細胞が樹状突起を伸展させ、異物を感知していることを発見-阪大ほか

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2024年10月29日 AM09:30

ヒト腸管内の異物を感知するメカニズムは不明だった

大阪大学は10月22日、ヒトの腸管で樹状細胞が腸管管腔内の異物を認識するメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の猪頭英里特任研究員(常勤)、村上真理助教、竹田潔教授(免疫学フロンティアセンター兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

腸管の上皮層よりもさらに組織の内側に存在する樹状細胞やマクロファージは、腸管管腔内の異物を認識するために、上皮の間を通り腸管管腔内まで突き出る長い樹状突起(上皮間樹状突起)を形成することが知られている。研究グループはこれまでに、マウスにおいてピルビン酸とGPR31を介したメカニズムが、上皮間樹状突起の形成に重要な役割を持つことを報告していた。しかし、これまではヒト細胞を用いた実験手法の確立が困難であったことから、ヒトにおける腸管内の異物を感知するメカニズムは十分に解明されていなかった。

GPR31がヒト通常型1型樹状細胞に特異的に発現していると判明

そこで研究グループは今回、1細胞トランスクリプトーム解析、iPS細胞、腸管オルガノイドなどの新しいヒト細胞解析技術を用いることで、ヒト腸管における上皮間樹状突起形成のメカニズムの解明を行った。

まず、ヒト小腸の粘膜固有層から樹状細胞やマクロファージからなる単核食細胞を単離し、1細胞トランスクリプトーム解析を行った。これにより、GPR31がヒト通常型1型樹状細胞に特異的に発現していることが明らかになった。また、GPR31を発現している通常型1型樹状細胞はGPR31を発現していない通常型1型樹状細胞と比べて、抗原処理や抗原提示に関連する遺伝子の発現が高いことがわかった。さらに、ヒト腸管の通常型1型樹状細胞は、ピルビン酸で活性化されると樹状突起の伸展が誘導されることが明らかになった。

ピルビン酸がGPR31を活性化することで、ヒト通常型1型樹状細胞の樹状突起伸展を誘導

次に、ピルビン酸による樹状突起伸展におけるGPR31の役割を解明するために、ヒトiPS細胞とテトラサイクリン応答型制御システム(Tet-Onシステム)を用いることで、薬剤誘導性にGPR31を発現することができるヒト通常型1型樹状細胞を樹立することに成功した。この細胞をピルビン酸で刺激すると、GPR31が発現している時にのみピルビン酸による樹状突起伸展が誘導された。このことから、ピルビン酸がGPR31を活性化することでヒト通常型1型樹状細胞の樹状突起伸展を誘導することが明らかになった。

腸管の上皮細胞は隣り合う細胞と密接に結合することで細菌やウイルスの侵入を防いでいる。上皮層よりもさらに組織の内側に存在する樹状細胞が管腔内の抗原を認識するためには、密接に結合した上皮層の間を通り管腔内まで樹状突起を伸展させる必要がある。

研究グループはヒトにおけるこのメカニズムを解明するため、ヒト腸管オルガノイド由来の上皮細胞を単層化培養することで上皮層バリアを再現。さらに3D培養によりこの単層化上皮細胞とヒト通常型1型樹状細胞を共培養する手法を確立した。この共培養システムを用いると、ピルビン酸存在時かつGPR31発現時において、ヒト通常型1型樹状細胞の上皮間への樹状突起伸展が増加していることが明らかになった。さらに、上皮間への樹状突起伸展が増加することにより、通常型1型樹状細胞への管腔内抗原の取り込みが増加し、この通常型1型樹状細胞は最終的に細胞障害性T細胞をより強力に活性化した。

これらの一連の研究成果を統合すると、腸内細菌由来のピルビン酸はGPR31を介してヒト通常型1型樹状細胞を活性化し、その結果、通常型1型樹状細胞は上皮間に樹状突起を伸展して管腔内抗原を効率よく認識していることが明らかになった。

腸管感染症予防や粘膜ワクチンの有効性向上の新規治療戦略につながることに期待

今回の研究により、ヒトにおいて腸管の樹状細胞が腸管内の異物を認識するメカニズムの一端が明らかにされた。

「本研究で得られた知見が、腸管感染症の予防や粘膜ワクチンの有効性向上の新たな治療戦略につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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