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膵がん、ケストース投与で患者予後好転の可能性-藤田医科大ほか

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2024年10月24日 AM09:20

膵がん進行に腸内細菌叢の関与示唆、腸内環境改善に注目

藤田医科大学は10月17日、膵がん患者に対するプレバイオティクスの有用性を確認する研究を行った結果を発表した。この研究は、同大消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス学講座の廣岡芳樹教授、ウェルネオシュガー株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」オンライン版に掲載されている。

膵がんは、予後が非常に悪く、診断時には多くが進行しており、化学療法に対する反応率も低いため、治療が困難ながんの一つだ。膵がんの進行や治療効果には腸内細菌叢が深く関与していることが示唆されており、新たな治療アプローチとして腸内環境の改善が注目されている。

」を患者へ12週間投与、腸内細菌叢を評価

そこで今回研究グループは、腸内細菌叢を改善するプレバイオティクスの代表格で、さまざまな疾患に効果を発揮することが報告されている「ケストース」を膵がん患者に12週間投与した。プレバイオティクスは、体に存在する良い効果を発揮する菌を選択的に増やす、オリゴ糖・食物繊維などの食品成分。今回、フルクトオリゴ糖であるケストースが膵がん患者に与える臨床的な効果を検討するためのランダム化されたパイロット試験を実施した。研究では、膵がん患者を対象に、ケストースを12週間にわたり1日9g投与したグループと、非投与グループに分け、両グループの血液マーカー(CA19-9、NLR、アルブミン、CRP)、画像検査、身体所見、および腸内細菌叢の変化を比較・評価した。腸内細菌叢の変化は、特に大腸菌の量に注目して分析した。

体内の炎症状態・栄養状態を改善、大腸菌の顕著な減少

研究の結果、ケストースを12週間摂取したグループでは、腫瘍マーカーであるCA19-9の有意な減少や、好中球とリンパ球の比率(NLR)低下が確認された。さらに、栄養状態の指標である血清アルブミンの減少が抑制され、炎症マーカーのC反応性タンパク質(CRP)の増加も抑えられるなど、体内の炎症状態や栄養状態の改善が見られた。また、膵がん患者で増加傾向がある大腸菌が、ケストースの摂取によって顕著に減少した。これらの結果は、ケストースが腸内細菌叢を整え、膵がんの予後に関連する重要な要因に好影響を与える可能性を示している。

腸内環境調整など包括的治療、膵がん予後改善に寄与の可能性

ケストースの膵がん治療における効果をより詳細に検証するためには、大規模かつ長期的な臨床試験が必要だ。将来的には、ケストースのようなプレバイオティクスの活用による腸内細菌叢改善を通じて膵がんの治療効果を高め、化学療法の反応性を向上させる新しい治療アプローチが期待される。これら腸内環境の調整を含めた包括的な治療が、膵がん患者の予後改善に寄与する可能性がある、と研究グループは述べている。

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