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エブリスディ2年データ、SMA小児の多くが独立歩行可能となったことを示す-ロシュ

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2024年10月23日 AM09:30

100か国以上で承認のエブリスディ、発症前から治療開始した患者の2年データ発表

スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は10月14日、(R)(一般名:)について、進行中のRAINBOWFISH試験の良好な2年データを発表した。この試験は、生後6週までの乳児期に、発症前から治療を開始した脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:)小児(n=23)における本剤の有効性と安全性を評価するもの。研究成果は、2024年10月8日から12日まで開催された第29回World Muscle Society(WMS)年次総会で発表された。

SMAは、生命にかかわりうる重度の進行性神経筋疾患で、約1万人の乳児のうち1人が本疾患による影響を受ける。SMAは、生存運動ニューロン(Survival Motor Neuron:)1遺伝子の変異により引き起こされ、これによりSMNタンパク質が欠乏する。SMNタンパク質は体全体に存在し、健康な運動ニューロンと基本的な運動機能(飲み込む、話す、呼吸など)を維持するために重要である。このタンパク質がないと、神経細胞は正常に機能せず、時間とともに筋力が弱まる。SMAのタイプによっては、身体的な強さや歩く、食べる、呼吸する能力が大幅に減少したり、失われたりする可能性がある。

エブリスディは、5q染色体に存在する遺伝子の変異によりSMNタンパク質が欠乏することで引き起こされるSMAを治療するために設計されたSMN2スプライシング修飾剤で、中枢神経系と末梢組織でSMNタンパク質の産生を増加させ、維持することにより治療を目指す。液剤であるため経口または経管投与で毎日自宅にて服用する。本剤は、2018年に欧州医薬品庁(EMA)からPRIME指定を、2017年には米国食品医薬品局(FDA)からオーファン指定を受けた。現在、エブリスディは100か国以上で承認されており、12か国で審査中である。また現在、室温安定性のある新たな剤形として、錠剤が規制当局の審査中である。

患者のSMN2遺伝子のコピー数別に、治療に対する転帰を解析

RAINBOWFISH試験(NCT03779334)は、遺伝学的にSMAと診断され、まだ症状が現れていない乳児を対象とした非盲検の単群、多施設共同試験。エブリスディの有効性、安全性、薬物動態、薬力学を評価する。

発症前の早期に治療を開始した場合の転帰を評価するため、試験に参加した小児は生後6週まで(初回投与時の年齢中央値は25日)にエブリスディによる治療を開始した。試験では、各小児のSMN2遺伝子のコピー数別に、治療に対する転帰を解析した。一般的に、SMN2遺伝子のコピー数が少ないほど、より重度のSMAと関連している。

SMN2コピー数3以上の全員が、健康な小児の発達期間内に「立つ」「歩く」を達成

結果として、エブリスディで治療を受けたSMN2コピー数が3以上の小児全員(n=18)が、Bayley Scales of Infant and Toddler Development Third Edition()とHammersmith Infant Neurological Examination 2(HINE-2)による評価で、「立つ」および「歩く」のマイルストーンを達成し、その大半が世界保健機関(WHO)により提唱されている健康な小児発達の期間内に達成している。また、SMN2コピー数が2の小児(n=5)では、2年間の治療後、全員が座ることができ、60%が独立して立ち上がりと歩行ができるようになった。

すべての小児が経口摂取可能、認知スキルもSMAでない小児と同様

2年間の治療後、すべての小児が嚥下し、経口摂取可能となり、恒常的に人工呼吸器を必要とする小児はいなかった。疾患修飾治療を行わない場合の自然経過では、I型SMAの小児は支えなしに座る・立つ・歩くことができないだけでなく、通常2歳を超えて生存することが難しいとされている。

エブリスディによる2年間の治療後、BSID-III認知スケールによる評価で、試験に参加した小児はSMAでない小児と同様の認知スキルを示した。今回の試験は、標準化されたスケールを用いて認知機能を探索的評価項目として評価した初めてのSMAに対する臨床試験である。

有害事象は他の試験で見られたものとほぼ同様

死亡例や投与中止または試験からの脱落に至った有害事象はなかった。最も一般的な有害事象は、歯が生える、胃腸炎、下痢、湿疹、発熱であった。2年解析時点で見られた有害事象は、エブリスディのSMAに対する他の試験で見られたものとおおむね同様であり、SMAの基礎疾患よりも年齢を反映したものであった。有害事象の多くはエブリスディに関連しないものであり、時間とともに回復した。

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