神奈川県薬は、薬局が多重受診の疑いのある患者を発見した場合は、発見店舗から地域のリスクマネージャーに報告し、地域の薬局間で情報を共有する仕組みを構築している。
2022年10月~23年2月に実施した結果では、これまで多重受診が疑われた処方箋を受け付けた薬局は70.8%に上っている。多重受診が疑われた処方箋に気がついた理由を聞いたところ、最も多かったのが「お薬手帳からの情報」「地方薬剤師会からの情報」がいずれも3割に上り、次いで「リスクマネージャーからの情報」が1割を超えた。
中でも川崎市宮前区薬剤師会は、会員薬局のみならず非会員20薬局を含む79の全薬局のメーリングリストを作成し、多重受診の疑いのある患者についてはリスクマネージャーから宮前区医師会長に報告を行うなど、薬局・医療機関間で情報共有を行っている。メーリングリストから多重受診について、21年に4件、22年に7件、23年に4件、24年に16件を報告した。22年には偽造処方箋1件を見つけ出した。
具体的な事例として、異なる医療機関に定期的に受診し、睡眠薬を服用している患者を薬局間で情報共有。各薬局から医療機関に情報提供した結果、一つの医療機関から「多重受診について注意して、当院に一本化するよう指導する」とのレポートが薬局に送られるなど薬局と医療機関の連携を密にしている。
この多重受診を行っていた患者情報は医師会長から医師会内にも伝達され、一つの医療機関以外で睡眠薬を処方しないよう周知が行われた。
一方、調査では、多重受診の疑いのある処方箋を受け付けた時の対応について課題を聞いたところ、「本人に伝えることで他の薬局に行ってしまう」が64.4%に上った。患者に調剤できないことを伝えても他の薬局を利用してしまう例が少なくないことを示す結果だった。
神奈川県薬リスクマネジメント委員会は「常日頃から薬局同士で情報共有できるよう、今後も医療安全に関する情報をリスクマネージャーを通じて発信、授受し、共有できる体制を強化していきたい」としている。