11項目で構成される、特別な道具不使用の運動機能評価法
早稲田大学は10月10日、身体運動機能の自己評価法である「Koji Awareness(KA)テスト」のスコアが加齢に伴い低下することを明らかにしたと発表した。この研究は、東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)の室伏広治特命教授、獨協医科大学埼玉医療センター、早稲田大学スポーツ科学学術院の金岡恒治教授、苑田会苑田第三病院との共同研究によるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
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超高齢化が進んでいる日本において、人生100年時代をその人らしく生き抜くためには、加齢に伴う運動機能の低下を予防することが非常に重要だ。
室伏特命教授は、特別な道具を使用しない、誰でも手軽に行うことができる、運動機能に対するセルフ・スクリーニングテスト「Koji Awarenessテスト」を開発している。同テストは11の項目からなり、項目のスコアを合算する。スコアが高いほど運動器の機能が良好であることを示す。
加齢に伴う運動機能の低下は多くの報告で明らかになっているが、運動機能を簡便に評価できるKAのスコアと年齢との関連を分析した報告はなかった。そこで、KAのスコアと年齢の関連を明らかにすること、さらにKAのスコアが急激に低下する年齢を明らかにすることを目的に研究を実施した。
49.1歳を境にKAスコアは急激に低下、女性は男性より上半身スコアが急激に低下
研究では723人(女性523人、男性209人)を対象にKAの総スコアを算出した。併せて、得られたスコアから、上半身と体幹、下肢の部位に分けてスコアを算出した。その上で、各スコアと年齢の関連と、急激に低下する年齢を分析した。
その結果、年齢とKA総スコア、および各パートのスコアの間には負の相関関係を認めた。加えて、KA総スコアは、49.1歳を境に急激に低下することが明らかとなった。また、性別の違いによる各パートのスコアの低下については、女性において上半身のスコアが男性よりも急激に低下することが明らかになった。
サルコペニアやロコモ予防の一助にもなる可能性
今回初めてKAのスコアと年齢の関連が明らかになった。運動機能は性別にかかわらず、加齢に伴って低下し、49.1歳を境に急激に低下することが明らかとなった。また、パート別にスコアを計測することによって、年齢に伴う運動機能の低下が生じている部位を把握することができる可能性が示された。そのため、KAのスコアは、性別かかわらず幅広い年代で、広く普及できる可能性がある。
また、KAのスコアを定期的に計測し、スコアの低下を認めた場合には加齢に伴う運動機能の低下が示唆されるため、KAのスコアから運動機能の低下を改善するためのエクササイズを実施することの根拠となる可能性がある。「未病の人が、サルコペニアやロコモティブシンドローム等の運動器の障害へ進展しないための予防策にもなりうる点から、将来的な医療・介護費の軽減の一助となる可能性もある」と、研究グループは述べている。
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