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ALS・アルツハイマー病の早期診断技術を開発、異常凝集体を高感度検出-岐阜大ほか

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2024年10月18日 AM09:00

、神経細胞の損傷を引き起こす異常タンパク質凝集体の検出が重要

岐阜大学は10月9日、神経変性疾患の発症に関わるTDP-43およびアミロイドβ凝集体の超高感度検出技術を開発したと発表した。この研究は、同大大学院連合創薬医療情報研究科の本田諒准教授、大学院医学系研究科の下畑享良教授、岐阜薬科大学の位田雅俊教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Translational Neurodegeneration」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

神経変性疾患は、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症()、)などのように、脳や神経系が徐々に損傷されていく病気で、これらの疾患に共通する特徴の一つが、異常なタンパク質の凝集体の蓄積である。TDP-43はALSとFTLD、アミロイドβはアルツハイマー病の原因物質として広く知られており、これらの異常凝集体が神経細胞の損傷を引き起こすことが示唆されている。このような背景から、病的な異常凝集体を高感度で検出する手法の開発が重要視されている。

従来のSAA法、異常凝集体の十分な増幅を起こせない点に課題

シード増幅アッセイ(SAA)法は異常凝集体を試験管内で増幅することによって、これらを超高感度で検出する技術である。この技術はプリオン病やパーキンソン病で蓄積する異常凝集体を検出することが可能であり応用研究が進んでいるが、TDP-43やアミロイドβの異常凝集体に関しては十分な検出精度がなかった。これらの病的タンパク質の検出においては、反応基質となる正常型モノマーが非常に不安定ですぐに失活してしまうため、従来技術では異常凝集体の十分な増幅を起こすことができなかった。従来法での検出限界はおよそ15ピコグラムであり、この精度では病理学的に有意な微量の凝集体を捉えるには不十分だった。

「Brij-58」発見、病的凝集体の試験管内増幅と高感度検出に特に優れる界面活性剤

そこで研究グループは、新たなタンパク質の安定化技術を検索することによって、異常凝集体を効率よく試験管内で増幅し、検出する手法を検討した。

今回の中心的成果の一つとして、新たな界面活性剤「Brij-58」の発見が挙げられる。Brij-58は、この研究で行った界面活性剤のスクリーニングから見出された。この界面活性剤は、TDP-43やアミロイドβのモノマーを安定化させつつ、凝集体のシード増幅を阻害しないという特異な性質を持つ。このため、病的凝集体の試験管内増幅と高感度検出に特に優れた効果を持つ。

Brij-58組み入れにより、検出限界が従来法の100倍以上に向上

Brij-58を従来のSAA法に組み入れることで、TDP-43の病的凝集体をわずか5フェムトグラムという微量から検出することに成功した。これは従来の検出限界の数千倍に相当する。また、アミロイドβに対しても同様に高い検出感度が認められ、従来法の100倍以上の検出限界の向上が得られた。

ALS・FTLD患者脳組織でも、高い精度で病的凝集体を検出可能

さらに、実際の患者から採取した脳組織を用いた検証実験でも、この新しい手法が高い精度で病的凝集体を検出できることが確認された。ALSとFTLDの患者の脳組織からTDP-43凝集体を検出し、健常者との明確な差異を確認することができた。この結果により、神経変性疾患の早期診断に向けた新たな検出技術として大きな可能性を示すことができた。

早期診断・早期治療介入へ貢献できる可能性、他の病的凝集体への応用も

今回の研究成果は、神経変性疾患の早期診断や病態解明に向けた大きな一歩である。特に、この技術はTDP-43やアミロイドβの微量な凝集体を超高感度で検出できることから、疾患の発症前に異常なタンパク質の蓄積を検出し、早期治療介入に貢献できる可能性がある。現在、今回開発された技術を活用し、臨床現場で採取した血液や脳脊髄液からTDP-43の病的凝集体を検出する研究を進めている。

また、今回の研究で開発したBrij-58を基盤とするSAA法は、他の病的凝集体の検出にも応用できると考えられる。例えば、病的凝集体の一つであるFUSも、TDP-43やアミロイドβと同様に、従来のSAA法では検出が難しい性質を有している。「本技術を広くさまざまな病的凝集体の検出に応用するために、さらなる感度向上に向けた技術改良も進めている」と、研究グループは述べている。

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