全身に重篤な炎症を起こすVEXAS症候群、国内患者の病状変化や合併症など詳細は不明
横浜市立大学は10月9日、日本では難治性疾患のVEXAS症候群患者の治療が難しく、感染症、悪性腫瘍、血栓症などを多く伴い、重症な疾患であることを報告したと発表した。この研究は、同大医学部血液・免疫・感染症内科学教室の桐野洋平准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Rheumatology」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
VEXAS症候群は、軟骨・皮膚・肺・関節・骨髄などの全身に重篤な炎症を起こす難治性疾患で、UBA1というユビキチン化に関わるタンパク質の後天的な遺伝子変異によって生じる疾患である。これまでの研究で、全国的に多くの患者が存在していることがわかっている。しかしながら、日本のVEXAS症候群の患者の病状の変化や合併症についての詳細はわかっておらず、治療法の開発などの臨床研究を計画するための基礎的な情報が必要とされている。
全国のVEXAS症候群が疑われた55人対象、30人にUBA1遺伝子のモザイク変異を確認
今回の研究では、2023年5月〜2024年5月までの1年間に、全国のVEXAS症候群が疑われた55人の患者を対象とした。公益社団法人かずさDNA研究所において、精度管理がなされた次世代シーケンサーを使用し、血液中のUBA1遺伝子のエクソン全長における後天的なモザイク変異(バリアント)の有無を調べたところ、55人中30人の患者が、モザイク変異を有することが判明した。
登録から3か月後、プレドニゾロン・トシリズマブなど使用も多くの患者で病状残存
また、登録時と3か月後の症状、投薬内容、合併症、採血での炎症所見についても併せて調査した。その結果、登録から3か月後もプレドニゾロン(ステロイド)の投与量の中央値は13mg/日と高い水準で維持されており、トシリズマブなどの有効性が確認されている薬剤が多く使用されていたにもかかわらず、完全寛解に達した患者はわずか7.4%で、大多数の患者において病状が残存していた。さらに3か月以内に36.6%の患者に、グレード2以上の感染症、悪性腫瘍、血栓症などの合併症が発生した。以上より、海外の報告と同様に現時点でVEXAS症候群は重篤な疾患であると結論付けられる。
今後1年間の成績も解析予定
現在の治療法では寛解に至ることが少ない、合併症の多い予後不良なVEXAS症候群には、新しい治療薬の開発が急がれる。今回の研究成果は、製薬企業などがVEXAS症候群の臨床研究を計画する際に、重要な参照データとなる。特に、VEXAS症候群の患者には合併症が多く発生することから、感染症や血栓症の予防策も重要となることが想定される。「今回は3か月間の観察だったが、今後1年間での成績についても解析して報告する予定」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・横浜市立大学 プレスリリース