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AMLの治療開発につながる、TRIB1/COP1介した分子機構を解明-東京医科大

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2024年10月16日 AM09:10

/COP1シグナル系、AML発症との関連について詳細は未解明

東京医科大学は10月7日、)の原因遺伝子TRIB1によるがん抑制遺伝子C/EBPαを分解する仕組みを、ノックアウトマウスを用いた詳細な解析により明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学総合研究所未来医療研究センター実験病理学部門の角南義孝講師(特任)、中村卓郎特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Leukemia」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ゲノム解析技術の進歩により、白血病を含むがんの遺伝子レベルでの異常の多くは同定され意義も解明されてきている。一方、がん遺伝子やがん抑制遺伝子がタンパク質レベルでどのような制御を受けているかは不明な点が多く存在する。C/EBPαはAMLのがん抑制遺伝子として重要性が早くから着目され、遺伝子変異により失活している症例も認められる。しかしながら、大部分のAMLではC/EBPαは遺伝子レベルでは正常であるため、タンパク質レベルでの制御機構の解明が待たれていた。

研究グループは、マウスAMLでHOXA9の協調遺伝子としてTRIB1を同定し、TRIB1のAML発症に重要な機能としてC/EBPαをCOP1にリクルートして分解することと、MEK/ERKを機能亢進することを明らかにしていた。TRIB1/COP1は生物の進化の過程で古くから保存されているシグナル系であるが、この系をがん細胞がどのように利用しているのか未解明な部分が多く、AMLの治療における有用性も不明だった。

TRIB1を発現するAML細胞、COP1のKOで増殖停止・C/EBPαタンパク質増加

今回研究グループは、TRIB1の過剰発現によりがん化したマウスAML細胞でCOP1をノックアウト(KO)すると、急速な増殖停止と好中球分化が誘導されることを発見した。この時、C/EBPαタンパク質の迅速な増加が観察されたが、TRIB1を発現しないAML細胞では、COP1をKOしてもC/EBPαタンパク質は増加せず増殖停止も認められなかった。

また、元々TRIB1を発現していないAML細胞に後からTRIB1を導入すると、COP1 KOにより増殖停止とC/EBPαタンパク質の増加が生じた。C/EBPαタンパク質の迅速な増加は、CEBPA遺伝子のmRNA発現亢進に基づくものであり、TRIB1によるC/EBPαタンパク質レベルの低下によるフィードバック機構が原因と考えられた。

TRIB1/COP1に依存し増殖するAMLが判明、治療薬開発につながる可能性

ヒトAMLにおいても、TRIB1とCEBPAのmRNA高発現が相関する細胞株では、COP1 KOによってマウスAMLと同様の増殖抑制効果が示された。NPM1変異を有するAML症例にはTRIB1とCEBPAのmRNA高発現グループが存在し、TRIB1/COP1経路を標的とした治療法の対象として有望視される。

今回の研究で得られた結果や知見として、AMLにはTRIB1/COP1に依存して増殖するグループが存在することがわかった。このような症例群は、TRIB1とCEBPAのmRNA発現が高いという特徴があり、TRIB1/COP1系の遮断によりC/EBPαタンパク質の急速な増加がもたらされて白血病細胞は死滅する。

研究グループは現在TRIB1/COP1系を標的とする治療薬の開発を推進している。開発が進展することにより、TRIB1/CEBPAをバイオマーカーとするAML症例を選別して有効な治療を確立することが期待される。特に、正常核型AMLに多いNPM1変異症例の中には対象候補となる症例が集積していることも今回の研究で明らかになった。

TRIB1タンパク質自身もCOP1によって分解される

転写レベルでの遺伝子発現とタンパク質量の大きな乖離が観察されたことも、今回の研究で得られた特筆すべき知見である。mRNAとタンパク質の量は通常正の相関を示しているが、TRIB1関連AMLではC/EBPαのmRNAとタンパク質は逆相関を示すことがわかった。また、TRIB1タンパク質は遺伝子の活性化が生じても検出が困難で、その原因は不明だった。従来の研究では、TRIB1の役割はC/EBPαをCOP1にリクルートして分解することだけが提唱されていたが、今回の研究によりTRIB1自身も大部分がCOP1によるユビキチン化で分解されていることが明らかになった。

固形がん・代謝異常などの疾患の分子病態解明にもつながる可能性

AMLの治療成績は近年目覚ましく向上しているが、難治性の症例は依然として存在し新しい治療薬の導入が待たれている。HOXA9を発現するAMLは悪性度が高く、この中にはTRIB1が活性化しているグループが存在する。今回の研究は、このようなサブグループの分子病態に脚光を当てるとともに、TRIB1/COP1/C/EBPαの経路の重要性を明らかにしたものである。研究グループが進めているTRIB1/COP1を狙った創薬も、対象となる症例の絞り込みが重要であり、その意味でも今回の研究成果は今後のAMLの治療開発上重要な知見を提示したものと考えられる。「TRIBファミリーとCOP1の相互作用はAML以外でも固形がん・代謝異常・免疫異常にも関わっていて、今後これらの疾患の分子病態の解明にも資するものと期待される」と、研究グループは述べている。

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