タバコ煙曝露の雄・雌マウス、CSDモデルで片頭痛の感受性を曝露無しマウスと比較
慶應義塾大学は10月7日、受動喫煙が片頭痛に与える影響を調べるため、タバコの煙に曝露したマウスと非曝露のマウスを用いて片頭痛モデルにより、片頭痛の感受性を検討した結果を発表した。この研究は、同大医学部内科学教室(神経)の滝沢翼専任講師、井原慶子共同研究員(足利赤十字病院初期臨床研修医)、畝川美悠紀研究員(研究当時)、中原仁教授、内科学教室(呼吸器)の中鉢正太郎専任講師、福永興壱教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Headache and Pain 」オンライン版に掲載されている。
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片頭痛は有病率が8.4%と頻度の高い疾患だ。特に、女性では男性よりも3.6倍高いことが報告されている。片頭痛の誘発に関わる因子にはストレス、睡眠不足、天気、香水など、さまざまな要素が含まれる。受動喫煙も、その一つとして考えられており、臨床の現場では、片頭痛患者に避けるよう指導することもある。しかし、受動喫煙が実際に片頭痛誘発に関わっているのか、結論が出ていなかった。
片頭痛の動物モデルとしては、皮質拡延性脱分極(Cortical spreading depolarization:CSD)モデルがよく用いられている。今回、同研究グループは雄および雌マウスをタバコの煙に曝露した後、CSDモデルを用いて、片頭痛の感受性を、タバコの煙に曝露していない同じ性別のマウスと比較した。
タバコ煙曝露の雌マウス、片頭痛の感受性「高」
CSDは塩化カリウム(KCl)を大脳皮質へ滴下することによって誘発することができる。同研究グループは低濃度から高濃度のKClを順次滴下し、CSDの誘発閾値を調べた。低濃度のKClで誘発されるほど、つまり閾値が低いほど、片頭痛の感受性が高いと評価することができる。今回の研究では、タバコの煙に1時間曝露したマウスと、曝露していないマウスにおけるCSDを比較した。
雄マウスでは、タバコの煙への曝露によるCSDの誘発閾値の差は認められなかったが、雌マウスでは、タバコの煙に曝露されたグループで、曝露されていないグループに比べて有意にCSDの閾値が低下している、すなわち片頭痛の感受性が高くなっていることが明らかになった。
片頭痛患者への生活指導・治療方針への貢献を目指す
今回の結果は、受動喫煙が片頭痛の誘発に関わる因子の一つである可能性を示唆している。今後、未解明の誘発に関わる因子についてさらに多角的な研究を進め、片頭痛患者に対する生活指導や治療方針へ貢献することを目指す、と研究グループは述べている。
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