中央社会保険医療協議会は9日の総会で、塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ錠」(一般名:エンシトレルビル)の費用対効果について、重症化リスク因子の有無に関わらず、比較対照技術と効果が同等でかつ費用が増える「費用増加」とする評価案を了承した。専門組織で議論した結果、公的分析班による「現時点では追加的有用性はない」との分析結果を妥当と判断した。
コロナ薬は、上市後の費用対効果評価から、ギリアド・サイエンシズの「ベクルリー」が2%、MSDの「ラゲブリオ」が8%の引き下げが行われており、ゾコーバでも薬価が引き下げられることになりそうだ。
新型コロナウイルス感染症による発熱、咽頭痛、咳などの症状のある重症化リスク因子のない患者、重症化リスク因子のある患者を分析対象とし、重症化リスク因子がない場合は対症療法、重症化リスク因子がある場合はニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)と比較した。
ニルマトレルビル・リトナビルは現在、費用対効果評価を分析中であるため、ニルマトレルビル・リトナビルに追加的有用性が認められなかった場合として、最も安価な技術である標準療法との比較を行った。
その結果、いずれの分析対象集団でもゾコーバの追加的有用性を認めず、ICER(円/QALY)の区分を「費用増加」と評価した。塩野義は、▽「熱っぽさ・発熱」が快復するまでの時間はゾコーバ投与により短縮傾向が認められる▽早期のゾコーバ投与は5症状の快復までの時間をより早期に短縮している――など、ゾコーバの追加的有用性を主張した。
これに対し、専門組織は「現時点では追加的有用性はない」との見解を示し、「有効性がゼロとは言い切れないが、その有効性を含めて公的分析が行った感度分析の結果でも、費用対効果は極めて悪いことが示されている」と公的分析班の分析結果が妥当との判断を下した。