「乾癬」と症状が類似・区別困難なPRP、発症メカニズムに不明点が多い
名古屋大学は9月30日、世界で初めて毛孔性紅色粃糠疹(pityriasis rubra pilaris:PRP)のモデルマウスを作製し、発症メカニズムに関する新たな知見を報告したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科皮膚科学分野の吉川剛典病院助教、秋山真志教授、武市拓也准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Investigative Dermatology」にオンライン掲載されている。
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PRPは、全身の角化性紅斑を特徴とし、発症時期や原因などから6つの型に分類される比較的まれな皮膚疾患である。その中で、5型は幼少期から顔面、手の平、足の裏を含めた全身の角化性紅斑、多量の鱗屑、激しいかゆみ、痛み、傷口からの細菌感染などに生涯悩まされる。原因は長らく不明だったが、CARD14遺伝子の変化であることを、2017年に研究グループが報告した。しかし、発症メカニズムは不明な点が多く、有効な治療法が確立していないのが現状だ。また、PRPに似た、乾癬では、時にPRPと症状が類似し区別が困難になる。しかし、PRPと乾癬では治療方針や疾患の経過が異なるため、これらを区別することは重要だ。
IL-17とIL-36がPRP病態に特に重要
今回研究グループは、PRP5型の症状を呈する患者で報告されているCARD14変異をマウスに導入し、モデルマウスを作製した。モデルマウスの皮膚の遺伝子発現を網羅的に調べたところ、免疫細胞が分泌するIL-17と皮膚の角化細胞が分泌するIL-36という、炎症に強く関わるタンパク質が病態に特に重要とわかった。また、病態形成に重要な細胞集団を特定するために、シングルセル解析を実施。その結果、毛穴の外毛根鞘細胞、表皮の顆粒細胞、真皮の線維芽細胞において、炎症に関する多数の遺伝子の発現が亢進していた。主にこれらの皮膚の細胞と免疫細胞が相互に刺激し合い、症状を形成していると考えられる。
IL-17抑える治療薬投与で、モデルマウス症状が著明に改善
また、毛穴の外毛根鞘細胞ではIL-17の刺激を受け取るタンパク質(受容体)や、角化亢進に関与する遺伝子(Krt16、Pla2g2f)の発現が亢進していた。PRPの特徴の一つである毛穴の角化に、これらが関与していると考えられた。IL-17を抑える治療薬を投与したところ、モデルマウスの症状は著明に改善した。
S100a7、Krt17遺伝子発現、乾癬と区別するマーカーとなる可能性
さらに、乾癬患者や乾癬のモデルマウスで発現が亢進している、S100a7、Krt17遺伝子の発現が、PRPモデルマウスの皮膚では正常であり、PRPと乾癬を区別するマーカーとなる可能性が示された。
今回の研究では、PRP5型の発症メカニズムの一端を解明した。同モデルマウスを利用して、5型をはじめとしたPRPのさらなる病態解明や治療法の開発が進むことが期待される、と研究グループは述べている。
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