従来のビタミンD評価は採血必要・費用高額
大阪公立大学は9月30日、調査によりビタミンD欠乏の実態と要因を明らかにし、若年女性に特化した新しいビタミンD欠乏リスク判定ツールViDDPreS(Vitamin D Deficiency Predicting Scoring)を開発したと発表した。この研究は、同大大学院生活科学研究科の桒原晶子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Public Health Nutrition」のオンライン速報版に掲載されている。
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ビタミンDの不足・欠乏は、生活習慣病のみならず、妊娠高血圧症候群や子供の出生時体重の低下にも関係すると言われている。中でも、若年女性ではビタミンD欠乏の割合が高く、この改善が日本のみならず世界中で重要な課題となっている。基本的に、健康とされる個人や集団でビタミンD栄養状態の改善を図るうえで、まず重要なのは自身のビタミンD栄養状態を認識することだ。ビタミンD栄養状態の評価は、一般的に血中の25-ヒドロキシビタミン濃度の測定により行われるが、採血が必要で費用も高額だ。
栄養系大学所属の女性583人対象調査データから、判定ツールを開発
そこで、今回、研究グループは若年女性に特化した非侵襲的かつ低コストのビタミンD欠乏リスク判定ツールViDDPreSを開発した。同研究では、北海道・東北、関東、近畿・中国・四国、九州の18~40歳の栄養系大学に所属する女性計583人を対象とし、2020年~2022年の夏期(7~9月)、冬期(12~2月)のそれぞれで調査を行った。夏と冬に調査を行ったのは、皮膚に紫外線を浴びることでビタミンDが体内産生される影響を考慮したためだ。調査項目は年齢、居住地域、採血時期、現病歴、服薬状況、喫煙状況、飲酒状況、運動頻度、日光曝露習慣および状況、魚類摂取頻度、ビタミンDサプリメントの使用状況だ。食事調査は自記式食事歴法質問票(DHQ)を用いて行い、紫外線照射量は各地域の採血前30日間の平均ならびに累積値を算出した。また、ビタミンD欠乏は25(OH)D濃度20ng/mL未満を判断基準とした。一度の調査で、ビタミンD欠乏リスクスクリーニング票の開発と妥当性の検討を行うため、対象者をランダムにモデル構築用群と妥当性評価群の2群に分類した。
解析の結果、対象者全体のビタミンD欠乏者の割合は69.5%であり、モデル構築用群と評価用群の間で、背景因子に有意差は見られなかった。また、モデル構築群のビタミンD欠乏群では、関東地方以外の居住地、冬場の採血、BMI18.5kg/m2未満の割合、ビタミンDサプリメント非使用、平日の外出時間が短い、魚類の摂取が週1回未満の人の割合が、非欠乏群よりも有意に高い結果を示した。さらに、この結果に基づいて作成したビタミンD欠乏リスクスクリーニング票の妥当性は、評価用群でも担保されていることが確認された。
低コストで介入すべき集団同定やビタミンD欠乏の要因推測が可能、アプローチ方法も提示
今回の研究で開発したViDDPreSは、低コストで介入すべき集団の同定やビタミンD欠乏の要因推測が可能なため、アプローチの方法についても提示ができる。また、ビタミンDサプリメントの使用はビタミンD欠乏者に対して有用な効果が得られやすいため、個人でのViDDPreSの活用により適切なサプリメントの使用促進につながることも期待される。このことから、ViDDPreSは公衆栄養学分野におけるビタミンD欠乏対策の有用なツールとなることが期待される、と研究グループは述べている。
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