全国の高齢者4,502人のデータから死亡前3年間の生活機能の変化などを調査
東京都健康長寿医療センター研究所は9月26日、全国19市町村の高齢者の疫学データを用いて、死亡前3年間における生活機能の変化は、その低下する程度や速さで5パターンに分けられること、さらに、社会参加している高齢者は死亡直前まで自立を維持するパターンになる可能性が高いことがわかったと発表した。この研究は、同研究所社会参加とヘルシーエイジング研究チームの上野貴之研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Archives of Gerontology and Geriatrics」に掲載されている。
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高齢者の社会参加は、要介護認定リスクが低いことと関連があることが知られているが、要介護認定を受けたのちの生活機能の変化パターンとどのような関連があるかは明らかになっていなかった。そこで研究グループは、2010年に行われた日本老年学的評価研究の「健康とくらしの調査」の回答者のうち、2016年までに死亡した65歳以上の高齢者(全国19市町村4,502人)のデータを解析し、高齢者の死亡前3年間の生活機能の変化パターン、社会参加との関連について調べた。
死亡前3年間における生活機能の変化を、要介護認定のデータを用いて、自立、要支援1~2、要介護1~5の8段階で評価した結果、「自立を維持」「急激に悪化」「徐々に悪化」「中等度認定を維持」「重度認定を維持」の5パターンであることがわかった。
月1以上の社会参加の高齢者、重度維持パターンに比べ自立維持パターンを1.5倍辿りやすい
社会参加については、先行研究に基づいて「平等的な関係を特徴とする水平グループ(ボランティア、スポーツ、趣味)への参加」と、「階層的な関係を特徴とする垂直グループ(老人クラブ、町内会、政治団体、業界団体、宗教団体)への参加」「いずれかのグループへの参加」の3種類で定義。性別や年齢、教育年数、等価所得、がん・心臓疾患・脳卒中の既往、人口密度の影響を考慮して、社会参加している高齢者がどの生活機能の変化パターンを辿りやすいか検証した。
その結果、2010年時点で、月に1回以上社会参加している高齢者が、他のパターンに比べて、人生の最後まで自立を維持するパターンを辿りやすいことが明らかになった。社会参加している高齢者は重度維持パターンより1.5倍自立を維持するパターンを辿りやすいこともわかった。
性別や年齢、参加グループの特性によって異なる可能性
さらに詳しい分析(男女層別・年齢層別)の結果、女性では、いずれのグループへの参加でも、自立を維持するパターンになりやすいことがわかった一方、男性の垂直グループへの参加では、この関連性は見られなかった。また、調査開始時に65〜74歳、75〜84歳の対象者では、全体の解析と同様の傾向が得られたが、85歳以上の対象者では、この関連性は見られなかった。
以上より、社会参加が高齢者の生活機能の維持に寄与することが示唆されたが、その効果は、性別や年齢、参加グループの特性によって異なる可能性が示された。「研究結果は、健康寿命の延伸や高齢者のQOL向上に向けた重要な示唆を与えるものであり、今後の高齢者政策における社会参加の推進の必要性を強調することができる」と、研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース